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遠き君を愛す



「ななな、何で、京都の人なんかと結婚できるんですか!?」

「何でって、知らないよそんなの。」

「あんなに遠いのに…。」

「近い遠いは関係ないんじゃないか?」



馬鹿中禅寺!
関係あるよ!
小さい頃からずっと一緒に居たのは誰?
戦争の時に旅立つあなたに泣き付いたのは誰?
それを必ず帰るからって抱き寄せてくれたのは誰?
再会を喜んで抱き合ったのは誰と誰?


誰誰誰誰誰!!?


それは紛れも無く、私のハズなのに。


こんなに近くに居たのに、あなたが選んだのは…。




「あなた…、あら!すみません!気づかなくてっ。今お茶を用意致しますわねっ。」

「あ、あ、いえ…お構いなく。」



この男が選んだのは、何でもできて気の利くこの女性。

中禅寺の方を見ればこれが当たり前のようで、相変わらずの仏頂面。



「…じゃあ私もう帰るね。」

「おや、もう帰るのかい?」

「うん。もうここに居る意味無いから。」

「…何を、」




さよなら。




「名前?」

「ねぇ、中禅寺…。私の顔と名前、声。全部、忘れないでね。」

「・・・何を考えている。」




その問いには答えなかった。

中禅寺が遠い地の女性を愛せたように、私は遠い地の人になろう。
ただ、もう一生会えないような場所だけど。
あなたなら私を愛してくれるでしょう。


だって私はあなたを愛してるから。





End

  

あきゅろす。
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