傍ら
「中禅寺さん〜」
「なんだい?」
本を読んでいる中禅寺さんに声をかけると、ちゃんと返事を返してくれる。
良かった。今日は機嫌がいいみたいだ。
「本、」
「ん?」
「何読んでるんですか?」
「羅生門。」
羅生門は、芥川が書いた有名な本のひとつだ。
そんなことはどうでもいい。
私は本を気にしてるんじゃなくて中禅寺さん本人を気にしてるんだから。
「手、かして」
そう言うと無言で手を出してくれる。
「いいですね、こういうの」
「僕にはさっぱりだけどね」
声をかければ言葉が帰ってくる。
手を伸ばせば触れられる。
顔を向ければ、見てくれる。
「中禅寺さんの手、好きです」
「手、だけかい?」
「分かって聞いてます?」
「そうかもね」
傍らに居るあなたは、いつも変わらず
私をからかうけど それは私にとって、幸せで。
羅生門は、授業に出てきたので。
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