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バレンタインDAY

「むふふふふ」

「・・・黙りたまえ」

「いやです。むふふふ」




学校帰りにそのまま京極堂へ寄ると、鞄の中身を嬉しそうにバラつかせる名前。

中禅寺は鬱陶しそうにそれを見ている。





「わけてあげてもいいんですよ?」

「遠慮しとくよ」

「まぁ、この私が女の子たちの好意を無駄にするわけないですけど!」

「始めから別けるつもりは無かっただろ?」

「そういうことになりますかねー」





鼻歌を歌いながら無数に散らばったハート型のチョコを見ながら笑う。
袋の中に手紙も入っていたりして、照れくさくなる。


そう、今日はバレンタインデー!


世の乙女な女の子たちが想い人に甘い物を送る日。
(お菓子業界の陰謀とかはリアルすぎるので隅に置いて)



「どうせ友情関係の義理だろう」

「やだなぁ、見てくださいよこーれ!」




持っていた手紙をヒラリと中禅寺に渡す。



“かっこいい名前先輩が大好きです”




その内容を見て中禅寺が深い溜め息を吐いたことが分かった。
くだらないといったような目つきになり、手紙を机の上に置いた。




「告白ですよ告白!」

「まんざらでもなさそうだね」

「そりゃもう!さて、美味しく頂きますか!」




まず手始めに色よく焼けてるマフィンから・・・!


マフィンに手を付けようとすると、中禅寺が立ち上がった。
何かと思い上を見上げるとフッと笑った中禅寺と目が合った。



「君が帰った後にしようと思ったが・・・まぁいいか」

「・・・?何がです?」

「実は僕も昔の知り合いから貰っていてね・・・」



そう言って棚から出してきたのは可愛く包装された甘い匂いのする小袋。
それらが沢山重なって、細い腕に山ができた。




「生徒って・・・・」

「もちろん女さ。住所を教えたことはないのにね」

「中禅寺さんの変態!女たらし!私というものがありながら!」




ワナワナと震えて指を指すと中禅寺は
それらを床に置いて、一つの小袋を開け


食べた



見た目も味も最高なのであろうそれはみるみるうちに中禅寺の口の中に入っていった。




「―さて名前」

「何ですか馬鹿」

「さっきの言葉をもう一度言ってくれ」

「変態、女たらし、私というものがありながら、馬鹿」

「馬鹿は言ってないと思うけどね」




中禅寺は机から乗り出してグイと顔を近づけた。
条件反射で目を瞑ってしまい、安易に目を開けられなくなる。




「その言葉、そのまま返すよ」

「は、い!?」





私が間抜けな声を出したときに、額に口付けられた。
小さな音が聞こえたことが恥ずかしくてたまらない。




「僕は女にだって嫉妬するよ?」

「・・・・!」



微笑みながらお菓子の山を屑篭に入れていく細い手。
私は驚いて中禅寺の顔を見るも、また微笑み返されてしまった。


捨てるんだ、という言葉は何故か言えなかった。
それは自分が舞い上がってるからかもしれない。








(やっぱりね、君が一番甘いんだよ)
(そういう貴方が一番甘いことに、気づいていない)



 

  

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