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短篇
装いの11
さて、気が付けばハロウィンも過ぎ去っている。
ほんの一夜の乱痴気騒ぎ、飛び交うお菓子に過激な悪戯から何までも既に消え去った日和であったし、あの知人の姿はもうどこにも見えていない。
気が付いた時には全身がドロドロになった中で適当に自室の中に放り出され、意識を取り戻し次第やり過ぎてしまった侘びの様に部屋の片隅に転がるカボチャの山と兎の足に気が付く事だろう。
余裕があったのならば、そのまま人間の事が気掛かりで再度連絡を送ろうとするのかもしれない。

「……通じ、ない」

そこまでやった上で気付く。既にスマートフォンも何も通じなくなり、あの店の場所は誰も知らず。
残っているのは甘く痺れる快感の記憶と、一時の夢でない事の証明の様にそこらに置かれた顔も何もくり抜かれていないカボチャ達だった。



「似合ってますよ」「本当で……あの、本当になんですか……?」

完全にハロウィンが過ぎ去ってしまった店の中。何が待ち構えているのかと言えば、おどろおどろしい空気も隅の方へと追いやられたれっきとした服屋の雰囲気が辺り一面に漂っていた。
カボチャ頭が纏っているのもマントではなく由緒正しき燕尾服となっており、威厳溢れる中でランタンの中の光も幾分かすっきりとした色合いへと変わっている。
ここが服屋で仕立て屋である事は何も変わりはしないらしいが、蜥蜴人に抱き着き、べったりと甘え、頭を撫でられ、抱き締められ、口付けまで落とされた様な気がした辺りで意識を落として。
気が付いたらソファに寝かされていた人間に用意されていたのは、あの夜と変わらない爽やかな風味を宿した包帯だけであった。

「ええ、貴方にはとっても似合っていますとも……」「わひゃぁっ」

ミイラのコスプレと言うにはあまりにも布面積が小さく薄く、そして儚い。何をどう纏えば良いのかも分からなかった為にカボチャ頭に着付けを頼んだ結果、股間の前の方と太腿を隠す様に巻き付けられて、終わりだった。
色白の肌は何もかも剥き出し、尻肉は巻き付けられた事できゅっと引き締まる様子が見え、撫でられる尻穴は剥き出しで何かとスース―する。おまけの様にエプロンを纏った事で、身体の前半分の体裁は一応整った事になったらしい。

「改めて説明しますけれどもね、貴方は昨晩あの蜥蜴人に犯し抜かれた挙句快楽と至福の中で絶頂……最期の満足感等を味わってそのまま昇天してもおかしくなかった」
「そう、なんですかっ……あぅ……」
「ですが現にあなたは残っている。我々の仲間になる事を選んで何よりですよ、外には出られませんが……」

話を聞きながらも、違和感にだって気が付いている。肌寒さも感じないし、漂って来る香炉の匂いも随分と薄く感じる。
カボチャ頭に弄られる尻肉周りだけがほう、と熱くなる感覚がするのであり、蜥蜴人紫入に抱かれる前と少し似ている。

「そして貴方が此処に居る以上は、オーナーである私はただ居候させる、と言う訳にもいかないのですよ。ですから今日から貴方はこの店の職員です」
「っひっぃぃん…っ……っは、あぁ……」

言葉を喋りながらも尻孔の中に遠慮なく指が押し入り、鈍くなる感覚に突き通される感覚が何とも甘い物。
何も解されていないけれども、入り込むのは感じ取れる。

「業務は掃除、食事休憩は無し……と言いますが、貴方の場合は食事も休憩も全て他者から与えられる精気、ザーメンで賄う事になりますよ。良いですね?」
「はっ……はぁ……は、いぃぃっ……!?」

問答無用で肉棒を押し込まれながら、了承するしかないのは人間の今の体質と合わせて弾ける快感に理解しただろう。
ハロウィンが過ぎても終わらない異形との邂逅に、熱を帯び始める身体は随分と貪欲にものを求める。
悪い事なのかよくない事かも分かりはしないけれども、今は自分の肉体よりもただただ心地良さが溜まらなく。

扉が開く。来客が誰か訪れて、既に犯されている人間の身体が映される。
一夜の騒ぎが過ぎ去って、また待ち構える肉欲すらも待ち遠しく。ジャック・オ・ランタンに照らされ導かれた迷える魂は、かくして淫らに堕ちていくのだ。

【終】

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