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短篇
エロいかなヴィラン?3
「ぐぁぁぁぁ…っ…も、もっとゆっくり出来ないのかよぉっ」
「手術台の上で漏らされるのが面倒なんですよねえ」

呻く自分よりも年上の狼人がヴィランでなくヒーローであったとしても闇医者は結して動きを止めなかったのだろう。カテーテルに力を加えると、犬人の鞘の先端にまた深くチューブが押し込まれていく。
犬科の竿には骨が備わっている分簡単に押し込む事は出来ず、骨に沿ってゆっくりと押し込む方式で尿を溜める為の器具を挿入し続けていた。表面に麻酔薬を塗ってはいるが痛みと圧迫感は耐え難い。
人造の部品と機構を生身の人に装着するならばまだしも装着する為の土台や機構そのものを体内に埋め込み、思考に合わせて稼動させる様に動かすというのはどうしても麻酔が必要になった。
局所麻酔であったとしても、神経を直接長々と弄り回して問題は無い薬に弊害が無い訳では無い。故に闇医者は既に狼人に下剤も飲ませて、可能な限り粗相をしでかさない様に準備を続けている。

「して、本当に良いんですか?」「あた、だっ…当たり前、だっ……」
「……精神的に苦労するのは、もう俺だけなんですけどね……」

カテーテルの先端が膀胱を捉えて、早速僅かな残尿が管を通り抜けていくあまり愉快には見えない光景。最終確認を終えてから、全身麻酔をゆっくりと打ち込んでいけば、次第に狼人の意識が薄れていくのを確認、すっかり夢の中。
これで眠りこけている一瞬の間に自分が爆発してしまう危険があるのだと恐怖よりはやるせなさも浮かぶというものだ。どうして爆発するのか原因を突き止められたならば成り上がれるかもしれないという理想を振り払って、器具を両手に持つ。
外装を取り外して分解、狼人の輝石は右胸の肩寄りに埋め込まれている。過去の不摂生から摘出した右肺の代わりに輝石を埋め込んでヴィランになったとは本人からも聞いている話。小さく溜め息を吐いて、摘出に取り掛かる。力の供給を遮断してから、輝石を抉る様に。

南無三と願いながらロボットアームを操作して、紫色に怪しく輝く石が、ヴィランの力の素、機構の動力源が間違い無く引き抜かれた。速やかに保管容器に収める。反応を停止させるものであり、爆発には耐えられはしないだろうが。
小心者である狼人は、ヴィランに、人体改造に関連するものを全て綺麗さっぱり抜いてしまえとの
指示を送った。回路から機構の一切を再利用出来ない様に。爆発の原因が何も分からない以上、当たり前ではあるのだろうが。
ピン一本も身体の中に残すな。細々しさに嫌気が立つ命令を反芻しながら、闇医者は操作するアームの先端を変えて、手術室に通じる扉が外側から吹っ飛んだ。

「よーお、空いてるかい?」「ちょっと前まではですが」

狼人が目覚めた時には粗雑に縫われた痕だけが残っていて、カテーテルを自力で外すには二日以上の時間が掛かった。無力となった彼が何処に辿り着いたのかは、今更話す事も無いだろう。
狼人が従っている誰かが従っている誰かの元締め。先ほど摘出したばかりの輝石と共に、闇医者はヴィランの中でも大物である相手と立ち会っていた。立ち会わされていた。

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あきゅろす。
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