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短篇
エロいかなヒーロー?
生まれながらの握力、瞬発力、ふとした悲劇を切っ掛けに宿した念力、最近の発達が著しいサイバネティック技術、もしくはそのどれにも該当しないけれど説明は出来る様な明確な力。
力があるからと堂々と銀行等の重厚な防壁を突き破っての強盗は復活し、一部の格闘技にも力が無い者がただ一方的に叩きのめされるだけの悪趣味な戯れになり得る可能性が何時でも産まれ、
そういった自分の為だけに力を使う者に対抗して、弱者を守る者、そして悪に対して力を振るう者、スポンサーに付く代わりに攻撃を防ぐ者、その他大勢も存在はしていた。俗に言うヴィランとヒーローの誕生である。

「ぐっ…うぅ……これは……」
「……よお。やっと目が覚めた様だな」

それが二十数年前の話になった。今やヒーローは出来上がった教会によって管理される存在であり、ヴィランの方もまた同じく暗黒の中で膨れ上がる無視できない存在となった。
自動販売機の襲撃や違法薬物の運搬等からしてもヴィランに属する誰だかの組織の末端に雇われた者が関わっており、成功資金を幾らかピンハネする程根付いていた。
ヒーロー側からしても援助する会社に警察に続く新たな正義の象徴として、若干の反対運動を覆す程には住民達と大企業への理解を得て成長していた。

そして一度衝突が行われれば、命を落とす事は元より、ヴィランの場へとヒーローが連れ去られる事も、或いは逆もまた多く存在した。それぞれの機構を知る為に、または単純に連れ去った者の趣味や性癖に基いて。そんな具合で闇に葬られたヒーローもヴィランも数え切れない。
正義を成すのも悪に染まるにしても相応のリスクを伴う時代だった。背負った上でも正義を執行する者も、悪として無力を叩き潰す者は現れ続けて絶えないのだから最早恒例行事と成りつつあるのだろう。
かくして、一人のヒーローは。鍛え抜かれた身体を強調する様な全身タイツ、頭部を覆うバイザーと背骨を通した金属のパーツ、定番のサイバネティックと肉体を主体とした虎人は、ヴィランの本拠地に捕らえられていた。

「お前は」

少し前まで戦っていた牛人のヴィランが、にやついた笑顔を向けている様子に苦悶の表情を浮かべながら身体を起こそうとするが、磔にされた身体は僅かにも動かない。
戦いの体を成していなかったというのは、かの虎人が一番分かっている。必殺技の数々は効かず、ごく軽い様に繰り出された攻撃で武装は破壊され、そして気を失って此処まで攫われたのだろう。
バイザーに仕込んだ通信機器もきっと通じない筈。牛人のヴィランは実に楽しそうに笑い、その手には大振りのナイフが握られている。刃先をスーツの胸元に宛がい、思い切り引き裂いた。
胸元には機構の動力源である輝石が埋め込まれている。それを摘出されたならば、もはや虎人はただの人に成り下がる。そんな方式で力を得ていた。

「ぐっっ……!」「てめえはこれから俺の手でたーっぷり料理されるんだからよ、子猫ちゃん?」

ごく薄い刃を超高速で振動するナイフは容易く防弾性能が備わったタイツスーツを切り裂き、更に虎人の肉にも薄く血を滲ませる。
手首に突き刺さっているものの正体が強壮剤である事も、周りに置かれた医療機器も全ては虎人を墜とす為。

「や、やめ」「やめるわけねーだ」

そこで何が起こったのかは二人には分からなかった事だろう。輝石が爆発した事も知らないまま、発生した大規模な爆発はヒーローとヴィランの命をそれぞれ一人ずつ、
牛人が陥れたヒーローの成れの果てを二人、牛人の下で悦楽に浸っていたヴィランの下っ端を六人負傷せしめた。

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