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短篇
混濁8
心の底から今の彼が望んでいたものが、一気に体内を満たす感覚。人間と段違いの精力を有する分その濃厚さは確かに味わえる程に。
開きっぱなしになって居た口からは甘い吐息が溢れるが、相手は再度自分の口を使って塞ぎ止めはせずに、程好く汗が滲んだ首元に緩く噛み付いた。びく、と小さく震える。
脈動の度に一回り膨れ上がる様に相手の竿が蠢いて、べっとりと腸壁に張り付いて離れる様子を何一つとして見せない精液の塊だ。僅かに溜まっていた宝石の粒は、緩やかに集まり始める。

「ぁ……は……っ……〜……っ……!」
「……大丈夫かい?てっきり俺が欲しいからやっちまったと思ったが「うるさい……っ!」

十分に満たされてしまっては欲求も薄れ、求めた以上に腹の中にたっぷりと吐き出された証拠の様に下腹部は僅かに張っている。口内に含むは微量の血の味。
そして満足気な相手が首筋に丁度痕を残したのだといやらしくも憎たらしくも、そして朗らかにも見える顔から察して、彼はやっと羞恥心が沸き上がった。

「だか、はぁっ……!?ひ…こ、れ、だから……いやだったんだよぉ……」
「おうおう、分かってる分かってる…だから落ち着きなって……すっかり可愛くなりやがって……」

反射的に腰を逃がそうとした彼の全身を貫いたのは、いやまたは今も尚貫き続けている相手の竿がごりっと内壁を擦って刺激が走り、放たれようとした言葉も尻切れになってしまう。情けなくも赤らむ頬に、相手が頭を撫でて来る。
これだから人間では無い相手と絡むのはよろしくないのだ。一発程度で収まるだけの精力に過ぎない相手は、彼の経験の中ではひとりとして見つかっては居ないのだから。
そして、その様な相手の前で素面になっても、必死に言葉で拒もうとしても、快楽に浸かった身体は中々に逃れる事は出来ない。密かにもっと求めて居るとは、彼の頭の中では絶対に認めたくなかったものだが。
頭を撫でていた手が離れては、次には腕が背中に回され、繋がり合ったまま緩く抱き締められる。屈強な筋肉の硬くも弾力のある質感と雄の香り。悪臭と感じないのも、慣れなのだと彼は何度も頭の中で言い聞かせる。

「……一発だけで勘弁してやるよ……落ち着いたら言えよな?」
「…………くそっ……」
「それに、俺からしても気になるしなあ……へへ」
「……何だよ……もう……」

十数分後。突起を逆立てたまま相手が雄を彼から引き抜き、僅かに先走りが飛んだ。相手によって精液を掻き出されるのが惨めに感じ、また心地良くも思う中、腰が痺れている関係で一日泊まる事に決定。
流石にそこまではしなくていいと強く押した分、沸かした湯に浸した布で身体を拭い汚れを清める。堂々と屹立した雄が萎えながら元通りにしまいこまれる光景を眺めないようにしながら。
雄の香りは僅かに残った。香炉に焚き付ければまあ問題は無いのだろうと思ったが。願っていたのだった、が。

「…………」

彼は絶望の表情をその直後に浮かべる事になる。あれだけ注ぎ込んだ精液を掻き出し終えたのに、まだ異物感が下腹部に残っていたのだから。粘液とはまた違う、もっと硬質な。

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