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短篇
混濁3
「ほぉう?俺の身体の中に出来る?宝石を?抉り取って?売り捌こうとしたんだな?」
「…………うだよ」
「ん?」
「そうだよ!金になるって!そしたら……何で笑うんだ!」

連れ込まれてしまった家、崖をくり抜いて作られた空間の中は居心地が悪いものではなかった。毛皮が敷かれた地面はそれだけでも冷たくは無い。落ち着く程度の弱さをした甘い臭いがする。
盛大に腹まで抱え込み、床に尻尾を打ち付けながら笑い転げる相手を前に、彼は黒髪を振り乱して強い口調で言い放った。右腕は薬草が詰められて固定されている為、物理的には無理は出来はしない。
武器の類から食糧までも、全部を没収されて壁に吊り下げられてしまった以上取り返すには相手を乗り越える必要が有るもので、実質不可能である。
明らかに天井までつるりと磨かれ、ほぼ半球状を保っている相手の住処。それだけ精密で、強烈な岩肌を削り取る力を持ち合わせているのならば。歯噛みをしながら、彼は落ち着こうとした。
続く笑い声に、落ち着いた腹がまたむかむかとして来た頃、相手はやっと身体を起き上がらせる。住処と合わせて彼と比べ随分と大柄で、その顔は変わらず笑っていて。

「心臓に集まってる訳無いって話だよ。溜まるんだったら此処だぜ、此処?」
「…………え?」

瞳をぱちくりと丸くしながら、彼は思わず絶句した。相手が楽しげに指し示した其処とは、間違いなく相手自身の股間であるのだから。種族の違いなのだろう、人間のぶら下がっているものは見えては居ない。
鱗で覆われてはいなさそうだが、屈強に引き絞られた筋肉のみだ。いや、声質からしても男か雄の割りには、その股座の土手あたりはやや過剰に膨れ上がっている様にも見えたが。

「此処に溜まって、普通に排出されるんだぜ?小便とかにな?だから俺の心臓をああして抉ったりするよか、便所を攫った方がマシだったなあ……ははは」
「っ…くそ…うぅっ……!」「おいおい、泣いてくれるな…まだ可能性が残ってない訳じゃあ無いなんだからよ……」「ひゃあっ!?」

まさか目元に滲んだ涙を拭われたのか。まぶたに残るぬらりとした感触に露骨に声を漏らした上で、尚も笑いっぱなしの相手を彼は見た。顔を寄せて来たが為に、視線は嫌でも集まってしまう。

「集めたら何とかなるかもしれないぜ……?てな訳で、だな」
「……え?」
「……へへ、悪い様にはしねえからよ……そんな気になると、急に興奮しちまうもんだなあ……」

相手の言い分はこうである、溜まって居た宝石が削れて溢れ出しているのは多分間違いは無いのだと。
溜め込だものを出せてはいるのならば問題は無い、ならば宝石も作れるのかもしれないと。

その為に。夜を手伝えとの話である。

「な、な、な、何でだよ!?」
「小便に浸かると色味が悪くなるんでなあ…つー訳で、頼むぜ?」

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あきゅろす。
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