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短篇
お金の話8
やがて人間の下腹部の膨らみそのものが更に質量を胎内で増していき、つついてしまえばそのまま破裂してしまいそうな代物にまでなり果てる。日に一度獣が念入りに毛繕いの様にその人間の全身を舐め回す。

「ぅぁ……あ、が……かぁ……」

全身はいたく敏感になっており、僅かに竿から先走りを漏らしてしまったならばそれだけで獣によって舐め回され、精液を獣の口内に吸い出されて達する事になる。拘束をされてもされなくても、下腹部の重みからもう動けはしない。
獣は食事をせずに傍で眠っているか、またはその瞳で人間を眺めているか世話をしているかのどちらかだった。鋭い欲望溢れるものではなく、穏やかな、まるで自分の番を見る様なものだ。

「………〜……うん…やっぱりちょっと昔の音楽の方が何かなあ……」
「あ、ぉ……ひ…ふむ、ゃ…っ…っ!」

くるる、くるると獣は喉を甘ったるさを感じさせる鳴き声を上げながら人間を見据える。固定されたままの下半身をぐりぐりと蠢かせながら、解れた尻穴が内側からひくついて抉じ開けられ始めた。
時間からして獣が番と交わった時よりも圧倒的に早いものであるのだし、そもそも人間は竿までれっきとして存在している男、雄であるとは獣も知っている。知った時には機械より注がれたフェロモンが剥がれた時だ。
気付いた時には種を仕込み終えていたのだから、雄であっても番である方が勝っていたが故に獣は激昂しない、動揺しない。その胎の内側には確かに獣の仔が出来上がっているのだし、産み落とされるのはもう直ぐなのだから。

「んふぁぁぁぁ…ぁ……ぁ……!?」
「ぐー……ぐー……」

ヘッドホンを嵌めたまま狼人が安らかに寝息を立て始めた時に、いよいよ尻穴の奥へと眠っていた卵がその先端を覗かせ、音を立てながら、或いは猛烈な快楽と共に前立腺を押し潰して体外へと押し出されてしまう。
苦しさよりも勝る快楽は獣にたっぷりと仕込まれたからであり、あまりにも早急に、それも腸内を傷付けない様に柔らかな粘液を纏った透明な袋に包まれて仔が産み落とされたのは機械の白濁に混ざった薬物によるものだった。
獣も理解している様に中身の仔を傷付けずに器用に牙を使って膜を食い破り、露わになった紫色の、親と殆ど同じ姿の、まだ柔らかな我が子への毛繕いを始め、人間は腹部の膨らみの通りに新たな仔を産み落として行く。

「あ、ぁぁぁぁ……ぁ……」

実際に仔を孕んでしまった快感と絶望と、雌になってしまった己への墜落、理不尽までもが掻き消える。どす黒い現実とは裏腹に虹色の霧に包まれたかの様な至福を味わいながら、人間は仔を産みつつ潮を噴いた。




「はい、確かに受け取りました。楽だったでしょう?」
「そうっすね、手入れは面倒だったんですけど、予想よりずっと良かったみたいですよ」
「予想以上に仔沢山で何よりですね…それでは、返却は確かに、それでは今後ともご贔屓に」
「はーい……お疲れ様でしたー……」

獣の孕み落とした仔は、しかるべき場所に納入される。引き換えに纏った金額か支払われる。狼人はもう目すら開いた獣の仔をきっちりと受け渡してから、
機械を連れて、部屋から出て行った。後には金額を得た獣と、人間が残るばかりだった。

「それにしても、ちょっとけちんぼだったな、あの獣……使用人として、今度はもっと良い感じの奴に頼むか……」


【終】

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