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短篇
お金の話7
封筒の中身を歩きながら開いて確認。其処には言葉通りに五桁が揃っているでは無いか。狼人の予想以上に高額で、思わずず笑いそうになったよりも、ほっとするものがあった。生活費が捻出出来る、と。
帰りに色々と足りていなかったものを近所のスーパーで買い込む。徒歩である以上運ぶのは面倒だなと思ったのだが、まだ狼人の懐には五桁が残っているのだ。指で摘んだ鍵で扉を開き、ただいま、と小さく呟きながら自宅へと戻る。
扉を開いた途端に溢れるのは饐えた雄の匂い。目まで開けられなさそうな濃密な精臭が早速部屋の奥から扉は、外へとむわりと強烈に漂い始めたが、狼人は変わらず荷物をテーブルの上へと置いた。

「……ぉ、ふ、いぃ…ぃ」
「よーし、これで腹壊しても大丈夫、夜中のおやつも確保した……後は、準備もこれで良しっと」
「……っ…く、ぐぅ…ぅ…」
「ふぅ…あー、ちょっと買い過ぎたがまあ良いよな、だって五桁だもんなぁ……」

多めの荷物を強引に運んだからか、舌を口から出して体温を調整しながら、うっすらと顔に付着している汗を拭う。犬系の獣人である以上汗腺の数の関係で、汗を掻くよりは舌を使う方が楽であるのだから。
一方その頃人間は、その見た目だけならば部屋から溢れる匂いの割に綺麗な状態を保っていた。開いた尻穴は粘度が強いどころか空気に触れてゲル状に固まった獣の精液で塞がれてしまっている。
更にその腹部は、粘性の強いながらも液体には違い無い獣の精を詰め込まれたものとは思えない様な奇妙な膨らみを帯びていた。丸々としたものが複数下腹部に浮き上がっているのである。
全身に獣の唾液を纏った、汚れをきっちりと舐め上げられて綺麗にされながらのマーキング。未だに人間は薄く汗を全身に纏わせていたが、感じる匂いは獣のそれだった。

「後は……シャワーを浴びる前にやっとこうかな、うん…どうせ綺麗にしないと、またあんな事になるんだしなー……」

狼人はワクワクとした調子を若干しょげさせながら、壁際の充電器に自動で移動している獣型の機械に近寄る。饐えた臭いはそれとして、首元のスイッチを幾らか操作すると、股間から男根を模した玩具が飛び出した。
使用するのは綿棒とグリス、清潔な布。綿棒で細かな歪な突起部まで、布全体で大雑把に付着した汚れを拭う。下手に放置をしてはいやらしい匂いは取れない、それはそれとして錆びてしまう場合があるのだから。
駆動熱に汗を再度湧き上がらせながら、鼻歌を歌おうとしてやめて、人間が時々呻いて。既に機械の放った白濁の中に混ざった雌の元と獣の雄に注がれた雄とが結び付いてしまっているとは理解した上で、長々と時間をかけてメンテナンスを終えた。

「……ん?」

機械の顔型を覗き込んでみる。確かに今笑った様な気がしたから。人間は涙の跡を顔に残して、意識を飛ばしていたのだが。

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