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短篇
お金の話
「おやおや、そんなに勃起してしまうだなんて、まるで盛り犬だね」
「……え?」
「ふっ、これだから素人は駄目なものと思うんだよ…せめて一週間でも良いから、ポーズの練習でもやって欲しいものだ」

さらさらと流麗に毒を吐くその姿、犬人であったが全身の毛艶の美しさからして狼とは違った、例えばモデルで食べている様な男なのだろう。睾丸のみを隠している鎖のジョックストラップまで淫猥に着こなしている。
別に悔しいだとかそういった感情は狼人には湧き上がる事はない。同じ様に半勃起を保つべきであろうと一時的な同胞だとか思っていたが、その股間を見るとあっと声が溢れてしまいそうになって、ぎりぎりで留まった。
何と言うべきか、完璧だった。完璧に半分勃起しているのだし完璧に半分萎えている雄がだらりと下着に押し出される形で股間で切なくも堂々とその存在を主張しているのであった。すらりとした見かけの割に長くも見える。
血流の通った、肉鞘から露出しかけたまだ淡く青い色合いを保つ淡桃色、僅かに覗く根元からは血管が僅かにちらりと見えていて、鞘の内側で僅かに根元が膨らむ様子まで下半身と打ち合わせたかの様な。

「……さあ、ちょっとの間どいてくれるかい?これからは僕の撮影なんだ」
「あ、うっす」
「いいねー!ナイスな半勃起だ!うん、良いよ良いよ、そそるったらありゃしないよー!」

そのポーズを取る姿が慣れきっていて優雅、と言うだけでは済まされない様な完成度がそこに確かに存在していた。何よりも美しいと思ったのは、竿が挙動の旅に程よく揺れて、勃起具合を変わらず保ち続けているのだ。
動作の反応が確かに写真で切り取られたのだとしてもきっと残り得る。だから半勃起なのだ、と理解した上で狼人は感情を振り払う様にして頭をぶんぶんと振った。このまま理解していしてしまうなんて、まるで変態の仲間入りじゃないか、と。

「よーし、それじゃあ次はペアで撮ろうか。これ大事だからね、うん、君もそっちに……うん良いよぉ、田舎臭…いや荒っぽさと綺麗さがお互いを引き立てて……」

何かとても腑に落ちない発言が聞こえたりもしたのだが、狼人は犬人に倣ってお互いに吐息を感じる距離ながらも特に反応を示したりはしなかった。半勃起の竿が触れ合いそうで、互いの股間が違いを感じる。

「じゃあ、そっと脇腹に触れてみよっかぁ…そう、そーっとね」
「ん」

小さく他者の掌が脇腹をくしゃりと触れるのを感じながら、ソファの上で覆い被さられた姿勢から手を伸ばす。毛並みを痛めない様に柔らかな調子で、しかしあまりに綺麗に整えられた姿にちょっと申し訳なく思えて、

「んひゃぁぁっ!?」「え?」「はいぃっ!」

撫でただけで甘い声が漏れて、犬人の股間は完全に根元の瘤が露出して勃起しようとする。ハリセンが唸りを上げて、すぱんと叩かれる衝撃が小さく響いたのを狼人も感じる。
見上げたその表情には涙目。理由が何かはわかりはしないが、やってしまったのかな、と思うがまま狼人は小さく謝罪した。

「……うぅ、くそぉ…い、今のは違うからな、絶対に…」
「……はぁ」

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