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短篇
アレする7
国王の性別が変わった。それも大いに変わった。中には高名な魔術師や医者の類をしつこく調べた情報屋も居たが際立った情報は集まらない。元から女性だったのか、それとも。
そんな話が国中で広まっても、国王は国王であり続けた。元々若い身体は年を重ねると屈強に、同じく妖艶にその身体は女性として育ち続けた。敗戦国の住民であっても差別せず、捕虜に鞭を振るう事を禁じた。
一方で闇を大いに振り払った弊害は、やがて返って来る。汚れた金で潤うばかりで有った者達が、闇に生きるしかなかった者が、闇を利用して私服を肥やした者達が集まり、膨れ、やがて爆発した。
反乱である。おまけに打ち倒すべき国王が女性になってしまったとくれば、もはや目的は一つであった。廃棄された武器を掻き集め、装備を整え、それは唐突に、あまりに速やかに、なおかつコンパクトに起こった。
反乱軍は召使いを丸め込み、ちょうど来訪して居た孤児院を国民達に気付かれる事なく包囲し、制圧し、国王を拘束した上で目の前で笑う余裕すら見せる。嘗て悪の蔓延っていた時に、相当高い位に付いていた者だ。

「…………」

更には孤児院の子供から養父までも人質に取られてしまった。今となっては国王は後手に縛る縄が無くても動けはしないだろう。だが、その様子も面持ちも異常なまでに落ち着いて居て、それが奇妙だと悪は感じた。
これから行われる事に対する強がりなのだと笑う者も居たが。その簡素な衣服に刃を押し当てて引くだけで簡単に敗れてしまい、女物の下着を纏う姿にまた笑う。匂いまで本当に女になってしまったのか、とまたも愉快そうに、下品な笑い声が聞こえたかと思えば。
次には悪なる彼等の一人の頭に鉄骨が生えたのだから、世の中とはつくづくに奇妙なものと言えるだろう。それこそ、雄が雌に変わってしまった事など些細なものだと言える程に。

「……ああ」

廃屋を改造して造り上げたらしい隠れ家、地下室から階段に通じる入り口から飛び出してきた鉄骨の姿に、彼は、国王は、今となっては彼女は嬉しそうな声を漏らしたのである。
音が漏れない様に造られた鉄製の扉を構わず貫いたのは鋼鉄であり、その鉄塊を持つ腕は分厚く、鱗は朱色と橙の合わさった姿は炎の様に見える。その力強さと鉄を突き破る力、そして何より虚ろに漂う血生臭さが事態を知るには十分で有った。

「お帰りなさい」
「ああ……」

その日、国王は無事に戻ってきた。その翌週、国王は急に婿を連れて来たかと思えば挙式の準備を始め、孤児院から一人の子供を養子として、正式な子供として迎え入れた。

絶対なる王の元、ただ反抗に対しては圧倒的な統治が訪れ、やがてはその仔は立派に屈強に育った、育ちきった、その仔はやがて王を引き継ぐ事になる。王妃となったそのハイエナ人と蜥蜴人の新たな国王は、今日もまた国に居て。

「今は言えます、貴方に出会って良かったと……」
「俺もだ……」

寝室でまた二人柔らかな接吻を落とし、息子が寝入った隙にまたその身を柔らかに抱き合った。闇が引き起こし奇妙の混ざり合った、国の逸話の一つである。

【終】

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あきゅろす。
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