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短篇
アレして5
遂に胎内から溢れる羊水にベッドはたっぷりと濡れそぼる。膨れた腹の奥底からめきめきと裂ける様な感覚を味わいながら、塊が、ここまで実った新たな命が産まれ始めた。痛みと苦しさと奥底に響くのは快楽にも満たないむず痒い様な感覚。
身体がどう受け止めるべきかまだ判断できない様に、ぴんとその国王の股間では逸物が屹立して先走りすら早々と溢れてしまって居た。痛くて、苦しい筈であるのに、傍に蜥蜴人が居るのがこうも頼もしいとは。
緩やかなる動きで腹部の膨らみは確かに下へ下へと向かい、まず子袋と膣とを通じる入り口を割り開いた。既に中程まで通過しておりだらだらと汁が溢れて止まらない。びく、と勃起したそれからまた汁が跳ねる。
蜥蜴人は知って居た。興奮をしているからこそこうも屹立しているのでは無く、命の危機を感じているからこその雄の本能なのだと。そんな彼が今雌としての本懐を成し遂げようとしている奇妙な姿を、素直に美しく思うのは狂っているだろうか。

「ひ、がぁ……や…あぁぁ…!?で、るぅぅ……!」
「…………」

何にしても自分に出来る事は何も有りはしない。ただ、その掌を重ねて爪が突き立つ程にきつく握り締められる力を受け止めるばかり。強靭な鱗に包まれた手は爪をも跳ね返し、国王の指先には血が滲む。
遂にその頭が出て来た。卵の先端であるべきか、と思っていたが紛れも無く頭であり、卵の先端でもあった。ごく薄い中身の透けた柔らかな殻、と言うよりは膜の中で、丸まった蜥蜴人の赤子が胎内から押し出されて居て。
全てを絞り出す様な苦し気な咆哮と合わせて、国王は精液を噴き出しながら自分の毛並みを白く汚しつつ、孕んだ仔を生んだのであった。
新たな火の様な橙色に近い鱗と、国王にも似た色合いをした柔らかな鬣を頭から背中にかけて生やして居た。紛れも無く蜥蜴人と国王の仔である事を知らせる様に。

「……ぎ…きゅるる……」
「……ひ、いぃぃぃっ……!?」
「…産まれた、ぞ」

奇妙にも臍の緒でまだ身体の奥底と繋がって居る様子を見て、自然と蜥蜴人は引き千切って彼と仔との物理的な繋がりを断つ。膜の中で小さく鳴きながら周りの膜を破ろうとする我が子の姿に、手助けも何もいらないとは知って居る。
外気に晒されたからだろうか、柔らかいものの様に見えていた膜はぱきぱきと小さく乾いた音を立てながらそのちっぽけな爪で、牙で膜を破り顔を覗かせ、腕を突き出し、ずりずりとベッドの上へと這い出て、

「……、〜〜〜〜〜〜!!」
「…………」

雄かどうかも分からない甲高い産声。蜥蜴人も思わず口角を上げながら泣き喚く我が仔を、何人もの相手を屠って来た両腕で優しく抱き上げ、母親となった国王の胸元に寄せる。
ただ光を失った瞳でぼんやりと暗い天井を見上げて、舌を突き出し荒く息を吐きながら、その温もりが我が仔なのだと、望まずに産んだ相手なのだと知った上で。国王は蜥蜴人と変わらぬ優しさで、その赤子を抱いた。

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あきゅろす。
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