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短篇
アレする4
もしも孕んでいなかったならば肉弾戦を用いて彼に好きなだけの反抗も出来たのだろうが。彼は圧倒的であり、その枷として使われて居た、今では杖であり武器でもある鉄塊は寝台の傍で色味を帯びて居る。
頑丈を誇る全体は歪に凹んだ箇所が存在し、血と油を重ねて独特な斑模様をなしており、蜥蜴人が持って振り回しているであろう箇所までも柔らかに凹んで居るのだ。それだけ暴れて居るのだろう。
僅かに残る意識は、誰が、何処でどう間違えたのかを考えて痛みを紛らわそうとして居た。苦しさが溢れる中で、彼を見捨てた向こう側の国王か、呆気なく捕らえられた自分が、その時点で自害しなかった自分か。
或いは、この種族を呪うべきであったのかもしれない。死肉を漁り、他者の獲物を掠め取る様な狡賢い種族とされていた自分達であったが、一部の彼等は両性の特性を持つ時があった。
それも雌に取り分け多く雄には然程存在しない。性器の一部が他よりも肥大化して雄に見える、というあまり気にならない事だ、と国王の母親は語って居たが。国王が備えて居たのは、紛れも無く雌の部位。

「いやぁぁ……っ…おね、がい……やだ、ぁぁ……!」
「どうか堪えてくれ……お前の話を思い起こすに、避けて居たのだろうな…こんな身体さ、当たり前だろうが」

のたうつ身体を寝台の上に縫いとめられながら、蜥蜴人に撫で回されるその腹がまたびくりと震え上がった。痛みに食い縛った歯と既に枕元を涙で濡らす姿は、国王の威厳の代わりに正しく雌の顔立ちであった。
国王は、妃を今の歳になっても選ばない、見合いに応じない、更にはあまり大浴場の類を好まなくなった一方で女性に対する気遣いは抜群、時々に不調を起こす事も全てが繋がる。
そんな長らくの積み重ねを一方的に蜥蜴人は踏み躙った。今となっては申し訳無いと感じて居たが、ふとそこに違和感があった。どうして自分はあそこまで熱気が溜まっていたかという理由もまた裏側に存在する。
手っ取り早く屈強なる兵士達の一歩目を闇へ堕とす方法、それは薬であった。痛みすら脳の奥底に蜜が流れる様な猛烈な快楽と至福を感じさせるもの、素材の量から捕縛された位の高い兵士等に使われたもの。
全身の筋肉を弛緩させる効果もおまけで付いて居たが、肉体含めてその臓腑までも屈強であった蜥蜴人にどれだけ効いて居たのか今となっては誰も知らない。性感を高める方面では、国王に対して暴発して、結果が今の有様だ。

「…………」
「うぁ……あぁぁぁっ……!?」

噂話を耳にして、もしや出来上がってしまったのかと蜥蜴人は不安があった。闘争においての殺人は慣れきって居るが、新たな命を生み出すのは蜥蜴人においても初めてだ。謝罪をしようと思った。眼を両方潰しても構わない程に。
だが、改めて彼を見た時に頭に沸いたのは興奮であり、それもまた薬の効能だ。本来は主人の姿を見るだけで興奮を刻み付ける様な代物だが、蜥蜴人が目にして犯して、興奮したのは目の前の国王で、既に刻み付けられて。

「今はもう…産んでくれ…俺との仔を……」
「いや、い、いあぁぁぁぉっ!?」

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