[携帯モード] [URL送信]

短篇
10
「……素晴らしい論文だ」
「え?」

脇で覗くだけでも吐き気を催す様な内容だったのだが、幼児の様に目を輝かせながら「」はそう呟いた。根本から狂った発想に倣っての頭のおかしな、とても異様な実験内容。
フィクションを期待したが監視して居たのか写真が百枚単位で無数に貼り付けられて居る。全てが獣人と人間とが淫らに絡み合って居る写真だった。雌雄問わず。しかし人間は男性の方が圧倒的に多い。
だからと言って実用的なものかどうかと言うならば、多分出来はしない。修正も一切されて居ないが、漂っている狂気じみた匂いまでは消せてないのだから。
「」もまた何処か奇妙な素振りを入学してから漂わせていたが、どうも波長がこの狂った論文と合致してしまったらしい。際どい写真ばかりなのに股間には一切の反応は無い。エロスを感じず素晴らしいものとして。

「是非ともこの博士と会談を…ああ駄目だ、実験は今でも続いてる…あまり離すのも良くないな…じゃあ……」
「それに驚いたよ…利益も出てるなら、やめないよな…はぁ…」
「馬鹿野郎!」

急に激昂した「」に全力で頬を殴られてしまった。大体衝撃と言えば乾いたタオル異常濡れタオル以下と言った所だろう。簡単に言い切るのならば全然痛くない。寧ろ「」の方が痛がっているではないか…指、折れてないか?

「ここまで性欲が齎す身体の変化について深々と掘り下げた実験に利益だと!巫山戯るな!君は数値ばかり追って本当に大事な事を忘れている!」
「…そういう内容の事をお前にだけは言われたく無かった!」

やってやる、この偉大なる学者様の後を継ぐのは僕だ!とかなんとか言いながらそいつは何処かへ鈍足で走り去って行った。まだ背中が見えるのに、二回程息切れしていたが。





「実験目的」

先人の実験結果の元、人間は発情期と同様の状態に置かれ続けた場合、明らかな雌の発情期とも取れる状態に陥る事を踏まえての実験である。フェロモンと同等の匂いを全身より放つならば、内面が雌化して居るとも考えられる。今回の実験は雄同士の交わりによって、雌扱いされた雄は懐妊するか否かを調査する。また、偉大なる学者内の被験者であったCの様な性転換手術並びに薬品投与は一切行わない。純粋に雌扱いされる雄は変化するか。更に女の幸せを得られるかが第一の課題とする。

「実験内容」

被験者は雄側が数十〜数百人、雌役は一人。偉大なる先人に肖って雄側は全員屈強な獣人、雌役は人間が好ましいと考えられる。何方も幾らかの日給を払って雇う事を考えている。
期間は年単位。薬品の使用を一切行わない分、極めて寛容な精神を持って執り行う。雌役の健康管理も怠らないが、それ以上に雌役の扱いを怠らない事を目標にしたい。

この実験も偉大なる先人の為に捧ぐ。雄も雌になれるか。報酬は割高にしておいた。場合によっては一週間以内に被験者は揃うだろう。希望の被験者が揃い次第、実験を開始する。



【終】

[*前へ]

10/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!