短篇
1
「前文」
発情期とは雌に子を孕ませる為、一般的に動物が有する雄が雌を呼びこむ、または雌が雄を誘い込む、そんな期間である。雌の香りに惹かれて雄が発情する、その他様々な方法も有るが要するに極めて交わりに寛容になるのだ。
獣の特性を色濃く受け継ぐ獣人にも極めて一部ながら一定期間中異様な性欲を抱く個体が存在して居る。目覚めたての思春期男子とは比べ物にならない様な欲を溜め込み発散したがる。
周りに雌が居ない時には自身で処理する事により辛うじて如何にかなるだろうが、一々後処理が面倒であった。更に一人より誰かに絡ませた方が速やかに発情期が終わる、との研究結果も出て居る。更に誰かが所謂美人と呼ばれる場合……(略)
「仮定提起」
発情期の獣人の番の代役は人間の同性でも可能で有るか否か。前述した通り道具、或いは番に似せた人形を当てがったとして異性の相手と行為に及ぶよりも発情期が殆ど収まらなかった例を参考に、
獣人と身体的特徴が明確に異なる同性の人間を相手にしたとして、発情期鎮静の効果が有るかを今回は調査する。
「実験方法」
発情期を迎える体質を有した雄獣人三人と、同じく雄の相手Ａ、Ｂ、Ｃとを二人ずつペアを組み閉鎖した空間での生活を観察する。参考実験として同体質を有した獣人を一人で個別の生活を送らせ、異性の発散相手を有する獣人をペアで生活を送らせる。
また、ペア相手となる同性Ａ、Ｂ、Ｃには以下の外見詳細・処置を及ぼして居る。
Ａ…平均的な外見、体格を備える人間。異性の発情期時に放つフェロモンと酷似した成分放出薬を事前に投与して居る。効果は実験終了まで持続する。
Ｂ…女性的な外見、細身の体格を備えて居る人間。実験の間異性と同等の衣類を身に付ける。
Ｃ…女性的な外見、細身の体格を有する。開始直前に雄のフェロモンに誘発し興奮状態を引き起こす薬品を投与する。効果は実験が終わる迄持続する。
実験における閉鎖空間の詳細…底辺4×4m、高さ2m50cmの直方体。セミダブルサイズのベッド、扉一枚隔ててユニットバス付き。出入り口となる扉はペアの入室確認後実験終了まで封鎖する。
食事・衣類・嗜好品等は扉に取り付けた受け口から自動的に供給する。食器等の回収も同様に、各種被験者が受け口に送れば自動的に行う。
壁面には外部連絡用通話機を備える。被験者はこれを用いて様々な物(本やカード類等の嗜好品から夜食等)から実験中止までの要求を外部に送る事を可能とする。
緊急事態の場合、閉鎖された扉は内部からも手動で開く様になる。また、実験中止を求めた場合、要求したペアの扉が自動的に開く。この場合報酬は本来の実験期間を十割とし、ペアが過ごした期間の割合分減額される。
実験期間…四十五日予定
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