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短篇
上暑-10
これが見るのが初めてという訳でも何でもない筈の、竜人の裸体が水気を含んでしっとりとした質感になっている姿。
相も変わらず屈強な肉体に毛まで生えているし、完全に縦割れの中に肉棒が隠れ切っておらず濃い肉色をした股間が見えているというあられもない格好であったが、一目見た瞬間に身体の奥底が弾ける様な感覚が走る。
色々あったりもしたけれどもやっと冷め始めていた頭が一気に沸騰した様な熱を帯び、急速に高鳴った鼓動と体温に合わさった表情の変化は竜人だって良く見えている。またやってしまったのか、と。

「どうしたんすか先輩……まさかまた?またムラっと来たなんて事は無いっすよね」
「し、知らねっ……ってか本当に、何だよ、あぁぁっ……!?」

先程胸毛を顔に押し付けた時と同じ程に赤らんだ顔と上ずった声での反応。何が起こったのかは分からないが、人間が興奮している事は良く分かる。
匂いを直接浴びていないというのがまるで奇妙であったけれども、吸い込んだ水気を拭いきれずに水滴を滴らせる新たに生えた体毛がこれまた同じく悪さをしている。

零距離でなければ感じ取れる事のなかったのも毛並みの中の油脂分に隠されていたからであり、敷布団まで染み込んでいませんようにと祈りながら掛布団をとりあえず丸めて身体を洗う事にした。
変に匂いが残ってしまうのも、と思ったので石鹸を使って念入りに。自分の体毛に擦り付ける事で初めて味わう泡立ちに正直驚き、それでも全身を懇切丁寧に洗ってみた結果。
洗い流された油脂分の中に混ざったフェロモンは安物の石鹸だけでは完全に流れ落ちる事はなく、タオルで拭っても体毛以外の竜人全身の毛並みに付着してしまい。
今では体毛の匂いだけでなく、竜人の全身から甘い匂いにも似た強烈な雄々しさと誘惑を作動させてしまっている訳であったのだ。

「と、と、とりあえず拭けって、水こぼれてるって!」
「おっ……ああ、毛が生えてるって結構むずいんすね……それで興奮はしてるんすか、先輩?」
「してるから何だってなぁっ……だ、だからちょっと近寄るのは、や、また、ひゃぁぁっ!」

近寄って来るだけでドキドキするとか、身体の奥まで漂って来る匂いに目が離せなかったりだとか。いつの間にか目に熱気を宿す様になり、竜人の顔と股間とを入れ違いで見るしか出来ない。
仮にこのまま抱かれてしまったとしてもきっと断れはしない。ぶかぶかした服の中で既に股間は再度張り詰めてしまっていて、

「ぐあぁ!?」「……大袈裟っすね、先輩」

抱き締められるといった訳でも何でも無く、頭を撫でられるだけに留まってはいたが、それでも猛烈な甘い感覚が頭の中に走り抜けていく感覚がする。
すべすべした無骨で大柄な掌の感触に興奮しながらもそれ以上の安心が沸き上がり、撫で回されでもしようものならそれ以上な甘い心地良さ。

「ちゃんと責任も取るから安心して下さいっす。これからは俺が先輩の雄……いや、先輩を雌として守るっすから」
「うん……うん?」
「あれだけ相性も良かったし俺のザーメン注いでやった以上水に流せも出来ないっすからね……今後ともよろしくっす」
「……うん?」

そして種族柄の義理堅さとも言うべきだろうか。平然と言い放ってしまった言葉と合わせて、愛おしい相手を抱き締める様に尻尾をその背中に絡ませて。
普段通りの威勢のいい反応や否定よりも先に、気が付けば特に逆らう返事が返って来ない人間が居てしまった訳だった。





「何か蒸れるんすけれど、服買うの付き合ってくれないっすか?」
「だからなんで路上で見せるんだって、あっ待て、抱き締めるなって、ふわ、あぁぁぁぁ……!?」

【終】

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あきゅろす。
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