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短篇
上暑-2
事故ったか病気で動けないかそれとも課題の期日を一週間遅いと勘違いしていたのだとか等と思っていたのであったが、これといった大事でもない。
だから踵を返そうとした所で叫びよりも先に片足に尻尾の先端がぐるりと絡み付き、ズボンすら纏めて脱げてしまいそうなぐらいにぎちぎちと片足を絞り上げられる。
痛みである以上に足に触れるのはブラシの様に尻尾の上面に生やされている毛並みの感触がする。鬣の無いタイプであったけれども

「あだだだ、もう分かった、分かったって……分かったとしても俺が何すれば良いの?」
「脱皮自体はちゃんと終わってるんすけれどもね、あの…こーゆー毛のケアってどうすりゃいいんすか?あと変になってないか見て欲しいんすけれども」
「俺より毛むくじゃらの知り合いは居るだろ?」「獣人だったら毛むくじゃらっすし有鱗種はアテにならないっす。ここはフラットな視点を持つ人間じゃないと」

具体的な内容は相も変わらず分かってはいないけれども、竜人が連絡できる人間が先輩一人しか居ないらしいが。
とにもかくにも見て欲しいのだと。鱗に覆われている種族でありながら毛が生えてしまった竜人の身体を。布団の中のパンツ一枚の肉体を。

「結果だけ言えばお前のパンイチを見る事になるんだよな。俺が」
「そんな顔したとしても俺は割と真面目に困ってるんすからね……こういう時に先輩がいてくれて本当に助かるっすよ」
「これからの状況を理解したからって別にまだ受けるって言っては無いんだってってもう……」

問答無用、尻尾によって足を相変わらず拘束されたまま布団を捲り上げれば、言葉の通りにやたらと明るい色合いをしたパンツ一枚のみの身体が露わになる。

「ああ、やっぱりパンイチじゃねえかよ……」

特にトレーニング器具が転がっている訳でもスポーツジムに通っているという訳でも無いし、それだけの金銭の余裕がある相手はこんなアパートに泊まったりはしない。
しかしながらその肉体としては圧倒的と言う外無い。四肢の太さは圧倒的であり、鱗で覆われている分隆起も凹凸も全て強調されて見えている様な気がしてならない。
おまけに胸と腹を覆っている体毛が一層荒っぽく見せている様であり、一応は人間の事を慕っている年下の相手である事も忘れ去ってしまいそうだ。
間近で見てしまった人間本人が真っ先に。

「で、どうっすか?変な生え方してるとか、ちょっとぐらい剃って整えたりした方が良いとか無いっすか?」
「……どうと言われても鱗から毛が生えてる様にしか見えないからなぁ……それと多分気付いてないかもしれないけど、尻尾から背中にかけても生えてる」
「えっっ!?」

心底驚いた表情を浮かべながら慌てる姿は如何にも奇妙なものであり、というか脱皮を終えてから尻尾の先端なり見れていたのに気付かなかったのかと本気で思いながらも。
顔以外にも鱗に覆われている部分はいつにも増してつやつやしているし肉体だって屈強なまま、普段とは違うのは困惑している表情を浮かべている顔が精一杯となればやはりそれ以上の処置も何も必要無い。

「ほ、本当に背中に……なのに頭に鬣が生えてはない!」「もう帰って良いか?というかそろそろ尻尾離してくれない?」
「あっ……いや、違うんす!一番見て欲しい所を見て貰ってないんすよ!」

さて、そんな事を抜かしながらも今現在の竜人はパンツ一枚しか纏っていない有り様。殆ど裸と言って良い具合で裸体を見せ付けている。
足の裏や掌と言った場所には生えておらず、顔に髭が生えてしまった、なんて姿も見えてはいない訳だが。

「あの、パンツの「帰る」

踵を返そうとしたが、今度は尻尾によって布団の上に倒された。

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あきゅろす。
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