[携帯モード] [URL送信]

短篇

まあ今更しょげっぱなしって訳にもいかないんだよね。低身長の割にもう直ぐお酒もタバコも楽しめる年齢になるんだし。でもタバコの匂いは嫌いだからお酒がメインかな。
そのまま鍛錬に武道の時と比べては極めて有意義な時間の使い方だと感じながら集中して励む。魔法を使い過ぎると何と無く身体全体がだるくたるくなる。夜更かししてたのに翌朝無理矢理早起きしたみたいな。

「良く頑張りましたね」
「……うん………」

結局彼は汗一つかかずに僕の魔法を全部さばき切ってたけどね。悔しい云々とかもうそんな事じゃなくて世界が反転しても僕は彼に敵わないって事が再認識出きる。
まあ世界が何回の何乗−一回反転しても彼が僕に刃向かうなんて有り得ないのだろうけどさ。絶対的な確信を持って言い切れる。但しあくまで僕の心の中でだけだけど。

「食事の前にシャワーを浴びなさいますか?」
「えっと、汗掻いてないから」
「坊っちゃま、今なんと?」
「…………」

口調は優しいけどさ。眼光の鋭さが一気に跳ね上がったよ。獲物を狩る様な、だとか生易しい感じじゃない。もっとこう、近いのは一週間何も食べさせてない肥満気味な人の目の前にご馳走を並べた時、かな。
当然僕がさっきの答えを返せない。たまには意見を押し通したいなと思っているがいざ目の当たりにすると…うん。質問と同じパターンだね。

「じゃあお願いね」
「かしこまりましたぁっ。用意をして来ますので…」

やたらと嬉しそうな声を残して一礼してどひゅんっと駆けていった。どれだけ期待をしてたんだろうね全く、まあ……
気持ちは解る。




大浴場には待ち構えていた。仁王立ちで。全裸で。馬鹿馬鹿しくて普通なら軽く流したいのだけれど股にぶら下がっている物がどうしても気になって仕方ない。毎回見てるのにね。

「…おや、そんなに気になるのでしょうか?」
「…………」

うん、ノーコメント。さっさと身体を流したいけどって考えてるうちに腰に巻いてたタオルを剥がされた。あっという間だ。だから軽く汗を流すだけって言ってたのにね。
何だかんだ言う気にもならないから蛇口をひねってぬるま湯を身体全身に浴びる。ふう、気持ちが良い。取られたタオルの事はどうせ返されないから気にしてはいけない。
そうしていたらふわりと頭の上に置かれる、まあ彼の馬鹿でかい手。ちょっと毛並みにぶらぶらしたのが当たってるんだけど。だけど頭の中を掻き回してくる優しい感触。
…どうにも僕の体全体に泡を包ませたいと思ってるのだろう。毛皮と混ざってせめてボリュームを出そうと…あぁ畜生。

[*前へ][次へ#]

4/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!