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短篇

半月と二週間前だったかな。僕の教育係だった熊人が急転直下な体調不良で長期休暇を取った。期間は無期限。簡単にいうのなら病気が治るまで帰ってくるなって事。
元々眠くなるわ板書は汚い上にさきりに叩いてくるし態度も極めて横柄と言う最低な奴だった。そして一日に小匙半分で効果が出るなんて凄いなぁと思った。何がどうなのかは言わない。墓まで持って行く。
で、代役として来たのが彼だった。第一印象はとてもデカい。第二に凄く太い。第三にはゴツい。執事長さんは一体何を考えて彼を選んだのか良く分からなかったけど直ぐに理解出来た。
第一に板書が綺麗で。第二に僕の興味を大いに惹かせながら教えるから全く眠気を感じられなくて。第三に褒めて伸ばすタイプだけど決して優し過ぎない。そのくらい分かるでしょうと指摘された問題は全部上手く考えたら出来た。

「…………」

ついでにおやつ作りが本当に上手いし美味しい。今食べているグリーンティーアイスも甘さの中に苦さがあって甘過ぎず苦過ぎず生クリームやらフルーツやらの相性も抜群で何かもうたまらない。
優しいし完璧と言えたのだろう。片手に持っていたダンベルが気になったけどすぐに慣れた。いや、慣れるべきじゃなかったんだ。本当に。
二週間を過ぎると、燕尾服を脱いで来た。最近暑かったから仕方ないのだろうと思った。更にはベストまで脱いでシャツに蝶ネクタイで僕とマンツーマンで授業をした。筋肉凄いなぁとか思ってた僕自身が甘かった。気付くべきだったのに。
今週に入ってからこの有様だ。なんで上半身裸なんだろうかな。でも言い返したらとんでもない目に遭いそうな身体で、現に僕は言い切る事が出来ていない。僕が初めて見た、嘘偽り無い身体だ。

「…………」

首をぐるりと覆っている明るい茶色の鬣はとっても貫禄がある。毎日手入れを欠かしていないのだろう、見た目はフサフサでモフモフでサラサラしている。
その鬣にバッチリと合う、貫禄が有り過ぎるぐらいの筋肉に覆われた身体。種族がどうとかそんな問題じゃないんだ。腕が僕の三倍半ぐらいある。腹筋の割れ目は両手指を全部使っていくつに割れてるか数えられる。斧でも止められる胸板。
僕には無い物が揃っていた。こっちは何をやっても太らない。鍛えても鍛えても食べても食べても。
正直、憧れていた。

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