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短篇
さもさ-6
人間の汗に濡れた全身に猫人の抜け毛が貼り付き、猫人の身体に何本もの人間の長い髪がへばり付いた頃。大量の精液と雄臭が漂い、人間から溢れている精液の処理と甘い余韻に浸るという間も無く。
これで柔らかな余韻に浸っているかと思ったが、お互いの為にそう言う訳にも行かない。疲れた身体をどうにか起こして、二人して風呂場に向かうのもまた恒例であったりした。

「毎回の事だけど、二人してやり過ぎちゃう」
「……だってあまりにさあ……あんまりに良い匂いで、気持ち良くて……」

べたべたに甘い感情と気分をお互いに撒き散らしながら、人間用のシャンプーとトリートメントが精液と唾液を洗い流した髪に溶かされてそこまで泡立たない。
猫人の身体にしても全身に獣人用のシャンプーを纏わせて泡立てられているという状態。げんなりした顔を普段は浮かべる所であったが、人間の髪を梳いているので機嫌はそれ程悪くなってはいなかった。
あれだけ傷めつけたのだから、丁寧なケアを間近で行う。先程の手荒さ等忘れ去ってしまったかの様に肉球の備わった掌と指先で、爪を立てる事無く丹念に解かして泡を纏わせては洗い流していく。

「みぎゃっ、だから堪らないんぎゃっ、ぬぎゅっ」
「……その気持ち、こっちだってあるな」
「……もう」

勿論人間側も同じ様な気分であるが、こっちの場合は洗うという名目で全身の毛皮を好き放題にまさぐるだけでなく、ボディソープを纏わせた手で尻尾を付け根から掴み、先端まで上下に扱けるという役得を持っているから表情の裏には高揚を備えている。
尻尾の付け根から尻肉に掛けて丁寧にへばり付いて絡み付いた人間自身の精液があるので他人の手を借りなければ完全には洗え切れない可能性がある、というのもまた理由の一つであったりする。
まあ、どちらかと言えば下心の方が強いのは猫人だって分かっていた。だから髪を清めるまでは、歯を立てたりする事も無いのである。

「あの時そっちが髪の毛に噛み付いたりしなかったら、こんな仲にもならなかったとは思うが」
「何を言ってるの、その後こっちの尻尾を全力で掴み上げたりしなかったら」
「その後で、もう一度出会ったとなったらもはや偶然でもない気になってしまったからな……本当、大した関係だよ」

お互いの身体、大半が人間の髪の毛の手入れを懇切丁寧に行いながら全身毛むくじゃらの獣人の身体を全力で清めれば、容易く一時間は溶けてしまう。
乾かすとなれば更に数十分以上。ドライヤーやらの動きを使ってから裸にタオル一枚という格好を経て。
やっと仕上がった頃には猫人の全身の毛並みは空気を含んで一段とふっくらとしたボリュームに満ち溢れた格好になっていた。
人間の髪は丁重な手入れと水気を残さず飛ばしても尚膨らんだり広がったりする事さえも一切なく、艶を帯びた状態でぴしっと伸びているのが見えた。

「…………」「…………」

これで噛み付いてしまったら、また台無しになってしまうだろうな、と猫人は思う。
折角あれだけ清めて毛の流れに沿ってブラシまで掛けたのだから、もう一度扱こうものならばきっとまた時間を掛けて手入れが必要だろうな、と人間は思う。

「うぎゃっ」「んぎゃっ」

お互い止まらないのは分かっていたからこそ、それぞれから放たれた声は同時なのだった。

【終】

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あきゅろす。
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