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短篇
剥き出し-5
スポーツに勤しんでいる獣人であったとしても、服を洗濯すれば済む話であるのに、毛並みを丸洗いする者の方が圧倒的に多くなっていた。
それ程までに獣人は下着の一枚を纏う事も無く全裸を選んでいた。種族がどうであるとか、毛並みが生えているのかなど何も関係なく、全員が全裸で過ごすのがほぼ当たり前となっていた。

「あ、あの……あの……」
「……そうだねえ……どうしてそこまで全裸に断るのかって……」「んー……」

腕組みをして考えている素振りを見せる犬人の隣で、猫人が何気なく呟きながら天井を見上げている。そこまで天井が高く造られていない建物の中。
ぱし、ぱしと小さく聞こえている何かを弾く様な音が尻尾が椅子を叩いている音であると気が付いたもので。何気なく周りへと視線を向けてみたら、周りの獣人達も大体がこっちを見ているのが分かった。

「……何でだろうね?」「そうだな」「えっ……えぇっ……!?」
「少なくとも僕達は寒過ぎる日以外は大体全裸で、それが当たり前だって思っていたからね……今更理由がどうとか言っても、普段からそうだったから、理由よりは性分の方だよね」
「俺も大体同じ感じだなあ……勿論夏場は毛を剃るし、秋頃から毛を伸ばして、そんな感じで一年過ごすのが当たり前なんだって思っててよ……」

そういうものであるからと、納得をするしかないのだろうか。内股になってしまいながら人間はそんな事をただ思うしかなくなってしまっている。
周りの視線は相変わらずだが、横に視線を向けたら小さく頷いているのが見えた。納得と言うのは少しだけ奇妙なもの。悩むだけ悩んで、そんな気分になったのか。
もじもじと身体を動かして、緊張からか思ったよりも汗ばんでいるのが分かる。ハンカチや服の袖が残っているのだったら今直ぐ額を拭いたくもなるだろうか。

「まあ、何か言いたい事があるとしたら……人間である君がこんな場所で今みたいに裸でいてくれる事が、本当に珍しくて嬉しくて……いやらしいって事だけだよ」
「……え?」
「匂い消しを提げてないのはこの中でお前だけだぜ?それに裸でスマホも持ってないんだから、この先どうすりゃいいのかも分かんねえだろうよ?」
「あっ……いや、えっ……えーっ……!」

ポーチも何も無かった以上、文字通りすべてをロッカーの中に収めて居た事を後悔しようがもう遅い。
何かと違和感が溢れていたが、獣人である皆々が衣服を纏っていない相変わらずの全裸である事ではない。服こそ纏っていないが履物は足元に備えている。荷物を運ぶ為のポーチを身に着けている。
そんな事よりも最も大事な事があったではないか。獣人ばかりのこの場所で、人間である自分も同じく全裸を保ってしまった現状を。

指摘された事による緊張がまた身体の内側に熱気を生み出して、漂ってくる汗がまた匂いを生み出す。こうして裸になる事を乗ってしまった事が、何よりも悪循環で、獣人達からしてみたら淫らなのだろうか。

「に、匂い消しを……匂い消し、どうにかしないと……」
「基本的に言えば発情しちゃう匂いを嗅いじゃったら効果が薄くなるからね……これからどうするのかにしても、君を隠すにはまだまだ色んな物が必要になるし」「ヤった方がすっきりしねえ?」
「結局……結局そんな事に落ち着いちゃうじゃないですかっ……!」「その割にお前だって勃起してんだろ」

びくり、と反応した時にはもう遅い事だった。いや、既に反応していた人間の方が悪いのかもしれないけれど。
テーブルの下では確かに全裸の人間の竿に自然と血流が通い始める様になっていて、その匂いまでも獣人の嗅覚が的確に言い当てられてしまっている。

「大丈夫だよ、悪い様にはしない。これ以上傷付けるなんてとてもとても」「傷付けてるって自覚あるじゃないですか!本当にそういうの苦手って言うか、こっちだって色々と準備ってのが」




「ひゃぁあぁぁぁぁっ!?」
「ほら、もっと力を抜いたら、気持ち良くなれるよ」

数分後、人間は初めて、他人の手によって絶頂を迎えていた。

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