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短篇

そこには魔物ではなく、竜人等に比べて荒い緑色の鱗を持つ鰐人が男を見つめていた。
一般的と男が思っている服装は身に付けていない、ただ前掛けだか褌に見えるものを下半身に纏っただけの姿だ。


「………こんな所まで来るなんて、誰だぁ?」
「……軽い気で道に迷っちゃって」
「ぷふっ、面白ぇ奴だな」
竜人の体躯は男より頭一つ程大きく、がっしりとしている。
「若干、死活問題かもしれませんが」
「そうか。案内してやっから、ついてきな」

そうして竜人はふいと後ろを向いて歩き出す。男は他に頼る宛もないので、それに続いた。


「よぉ…その人間どうしたよ?」
「ん、拾った」
暫く歩くとまたもや鰐人がいた。同じように下半身に布だけという服装だった。
「……お、久しぶりに人間を見たな」
「…………」

再び同じような体格、同じような鱗の色をした鰐人がいた。服装は例によって下半身のみ。

「すいませんが、服装は皆同じで?」
「実際楽だぜ。取り敢えずは、大将に会って貰うぜ」

そう言って男が連れられて来たのは、十数人ぐらいなら易々と入れそうなテント。
ごくごく簡単な造りとなっていて、分解すれば易々と持ち運べそうだ。

「器とかがデカイから、何の苦労もない筈さ」
入り口を仕切る布を捲り中へ、すると円形の空間が広がっている。

「おう、何だ……ん?その人間は?」
「道に迷ったらしくて、ここまで連れてきちゃいました」
「……と、いう訳です」

大将らしいその鰐人は地面に胡座をかいていて、下半身の前掛け以外には何も身に付けてはいなかった。

その為、全身を覆う鱗が破けそうにも見える鍛え上げられた強靭な筋肉や、
上半身に無数に存在する古傷の一つ一つがはっきり見て取れる。

「……ヨシ、もう日も落ちたし、飯と寝床ぐらいは用意してやるか」
「……ありがとうございますっ」
「ハッハッハ、良いって事よ!」

どんと胸を豪快に叩く大将に、男は感謝せずにいられない。


夕食はどんとまたもや豪快に大型獣の丸焼き。
鰐人とはマズルの広さが違う男は、顔の周りを脂でべたべたにしながらたらふく頂いた。

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あきゅろす。
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