[携帯モード] [URL送信]

短篇
サクサク-4
「……何かお前、変な事やってない?」
「へへへへへ、変な事、っっ、て?やってない、よ?」
「やってんだろどう考えても……ああ……屋内のプールでバイトしてるって聞いたけど、こんなに塩素っぽい匂いとか……何だこれ……?」

露骨に声を震わせる人間の身体から漂う匂いを、親友である犬人は鼻を鳴らす勢いでふんふんと嗅ぎつけてみる。仄かに漂う塩素の匂い。薄さからするに獣人と人間共用のプールであるのだろう。
眉間に小さく皺を寄せてから更に踏み入ってみるとそこにあるのは洗剤の匂い。水を消毒する為の塩素と近い風味、石鹸、ロッカーの錆と渇いた生臭さ。それからさっきまで食べていたBLTサンドイッチとカフェオレ。
服から漂う匂いとしてはそのぐらいで、頬を赤らめているのを見て、そう言えば尻尾を弄る動きも最近はなくなっている事に気が付いた。
毛並みをくしゃくしゃにされるのは堪ったものではないし、最近になっては静電気の問題も出て来ている。大切なのは保湿とかだが、学生だったら安物のブラシと食生活で精一杯。

「ああ、やっぱり何でもなかったな……考えが脱線して来た……」
「そう、だなっ…バイトがまだまだ忙しい、けどっ……こう、アレだ……年末になったら色々楽しもっぅ……」
「…………まあ、何されてようとそこまで踏み入る訳じゃあないんだが」「んひぁっっ!?」

軽く腰を叩こうと、獣人としての力を備えている分大きな掌がばしっと掌を叩いた途端に、周りの歩行者にも聞こえそうな声と共にその場に崩れ落ちる。
人間は人間で長丈のパンツを纏っているけれど、その奥底から漂って来る何とも言えない匂いに犬人はやっと何をされているのかを理解する。匂いの種類からも何ともげんなりする真実に辿り着く。

「一応聞いとくけど、無理矢理された訳じゃないんだよな?」「え、あ……あの、ごめん……でも、合意の上なんだよ本当に…だから……」
「あー、合意の上だったらそれ以上言うな……『酷い目』にあってないんだったら、もう俺から言えるのは何もないっつーか……」

頭の毛並みに手を突っ込んでわしゃわしゃと自分で掻きながら、何とも言えない表情を浮かべる犬人の言葉に、特に驚愕も失望もしていない様子を前に人間は心底ほっとした。
僅かに引いている様子はあるにはあるが、それでも何かを察した上で、内容をほぼほぼ理解しているのにきっちりと一線を引いてくれるのが何より嬉しかった。下半身に走った感覚もやっと収まり、ゆっくりと犬人の隣に座り直す。
出会った時と同じく。

「そんで、年末に何処に行きたいとかはあるのか?臨時収入多めだったら、そっちに期待する事になるけど……」
「うえぇっ……そう言う所はきっちりしてるのかよぉ……」「儲かってるんだったらあやかりたいんだよ……」

色んな事がきっとバレているのに、こうして他愛もない話に興じてくれるのが人間にとって何よりも嬉しく、改めて尻尾をモフモフすれば今まで感じた事の無いボリュームを増した質感。
顔まで埋めてくれようかと思ったが、流石にそれは、と手が強引に頭を掴んで辞めさせられる。

「ああ、馴れ馴れしかったかな……ちょっと、バイト先でこんな感じの事……」
「……病みつきって感じだなぁ……」

「……ちょ、っと……友達にバレちゃって、それで…っあっぐ…ふ……」
「そりゃあ悪い事しちゃったか?」
「い、いえ……なんだか、特に驚かれては無くて……っは、ひ、あぁぁぁぁ!?」

犬人と分かれて、いつもの様に清掃作業を終えて。自分のシフトが終わったにも関わらず、今の人間は用具置き場の中にいる。何なら全身の服を剥かれているし、その背後には牛人がいて、馬人がその傍らで二人の姿を眺めている。
ずっと何か様子がおかしいものと親友の犬人が思うのも当たり前の話で、今までの間人間の尻孔にはアナルプラグが突き刺さっていた。それを軽く弄り回され、一気に牛人の手によって引き抜かれると、すっかり開発され蕩けた尻孔と、中に溜まっていた精液がぶち撒けられる。
休日という事もあって深夜のシフトを挟んだ結果、たっぷりと可愛がられた。その翌日のいつものシフトまで、ずっと精液が胎内を巡っていた。

「人間の身体は相変わらずすべすべして良い感じだな……まあ、皆でヤり過ぎたから前のバイトに逃げられたけどなあ……」
「そんな事も無さそうで安心したぜ……さて、今日も楽しむぞ……」

馬人の手元には人間用のコンドームが握られている。それが何を意味するのかも、今の人間は十分過ぎるくらい理解していた。

[*前へ][次へ#]

4/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!