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短篇
サクサク-3
両開きの扉の中には掃除用具が収まっていると思わしきロッカーと、ビート版の詰まった台やらプール用の用具が鎮座している。実際に使われていた様子を見た事があって、漂うのは塩素のものと信じたい青臭さ。
普段の時間から一時間半程度早く入って問題は無い。床全体がヌルヌルになっていたり、変な物が転がっていなくて良かったと信じたい。信じるべきだ。信じるしかあるまい。窓がないので扉を開くよりも先に、普段使っているデッキブラシを探す。
湿っている事が珍しくない分、ロッカーの中からいつもの様にデッキブラシを取り出せない。そう言えば先に入っている獣人達に手頃なブラシを手渡されていたのだ。

「……あれ?」

そして開いた先には、何か変な物が転がっているのが見える。デッキブラシが数本、扉の裏側にはプラスチック製のヘラ。洗剤入りの容器がロッカーの上に造られた棚の方に。
他に何かが詰まっている。獣人用に作られているのか人間からしたらブラシさえも巨大。ブラシを傷めない様に逆向きになって突き刺さっているブラシの隙間に、ビニール袋に詰められた何かがあった。
きっとろくでもない物だと知っている。知っているけれどちょっとだけ。ちょっとだけなら中を覗き込んでも許してくれるかと思うがまま、黒いビニール袋の中を覗くと、色鮮やかな卑猥な玩具が詰まっているのが見えたので。
何も見なかったことにして袋を元に戻し、よくよく見てみれば普段使いのデッキブラシは入っていなかった。
二択を外してよろしくないものまで目に入れる。そんな不甲斐なさを何ともげんなりした気分として味わいながら、もう片方のロッカーを開こうとした。

「ぐるっぁぁぁぁっ!?だ、だぁからぁっ…コブまで入れんのっ、キッツ、ぐるぅぅぅっぅっ……!?」
「止めようとは思ってんだけどなぁッ!お前のケツと俺のチンポがそうしちゃくれねぇみてぇなんだなっ!何度もやってんのに、締め付けは変わらねえって……!」
「っっ……!」

人間がロッカーの中から黒犬人と獅子人との情事を眺める羽目になったのは、大体そんな流れであった。
物音がしたのであの二人が来たと思い、咄嗟にロッカーの中へと入って隠れてみた結果、綺麗に空いている隙間から情事が見える羽目になっている。
今更逃げ出せる事は早々に諦め、声と気配を押し殺しながらどうしても見えてしまう音と声と光景を見聞きする事しか出来やしなかった。

普段あの犬獣人のもっふもっふした身体を堪能しているからか、お互いの身体のラインがはっきりと見える様な雄達のまぐわいも当然ながら初めて目の前で見る事になるけれど。
どこをどう動かしたらどこが引き締まるのか。ごく短い毛皮越しに隆起する筋肉の、血管の一本一本まで盛り上がっている様子がロッカーの隙間という見づらい箇所からも露わになっている。
渇いた肉の音を経て、ばちん、と獅子人の腿辺りに黒犬人の睾丸か何かが叩き付けられる音が何度も響く。野太くて重厚な方向、激しい息遣い。
気が付けば人間も知らぬ間に勃起している事に気付かないまま、二人の、または二匹の交わりに夢中になってしまっている。

「ぐぉぉぉっっ、おらぁ、ぜーんぶ、吐き出してやっからなぁぁっ!?」
「ぐぅ、っうぉぉぉぉおぅ……!」

四つん這いになっている獅子人の背後からがっちりと黒犬人が身体を掴み、お互いの筋肉が完全に重なり合っているのが分かった。
その上でお互いに身体を逸らせようとして、ぐっと全身に、下半身を中心として目一杯の力が入り込み、間違いなく精液が吐き出されているのだろうと、割れた様子まではっきりわかる腹筋が内側から膨らむ姿で目に見える。

が、獅子人から溢れる体液は一滴たりとも存在していない。その股間に唯一纏っている、或いは被さっているとも言える様なコンドームが、細かな脈動と合わせて獅子人の射精を受け止めているのだから。
普段からああしているのだろう。恐らくは精液の後始末を手っ取り早く済ませる為だそう。そんな試行錯誤を行う程度には、色々とやっている事にまた何とも言えない感情が溢れていく。
ごぼ、ぶぼっと音を立てて粘っこく重たい精液が不規則な長さの糸を引いて露わになって、黒犬人の肉竿は目を見張る程巨大、特に根元は想像の範疇を大いに越えた巨大さで。
引き抜いたと同時にアナルプラグだったか、それが獅子人の尻孔に入れ違いで押し込まれ、細かに痙攣しながら喘ぐ様子まで目に映った。

「おうぅっぅ……あの人間、そろそろ引き込んでも良いんじゃね?」
「ふぅ…ぐるぁぅ……もうじき何とかすれば、オレ用のゴムも要らなくなるっすねえ……」
「…………」

とんでもない話を耳にしながら、言葉の意味を理解した時に感じたのは恐怖ではなく、どくん、と自分の鼓動が早まった実感だった。
結局その後完全に黒犬人達が居なくなるまでロッカーで籠りっきりになったので、豚人からは遅刻として扱われた。

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