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短篇

運び屋の仕事も終わったし、暇潰しも兼ねてこっちの道を歩いてみようかな。
ある人間の男はそう考えて、荒れ気味の小路を踏み締めた。

地図にも載ってないし、此処は何処だろうか。そんな事を考えながら、
その男は道無き道をさ迷っていた。

安直に知らない道を歩かなければ良かった。
日も落ちて寒さを感じ、男は腕を組んで身震いした。

「……何でこんな事を考えたんだろうか…」
誰も知らないような、背の高い茂みが周囲に生やされた道を歩きながら、誰に言う訳でもなく呟いた。

万が一の場合に備えて、対魔物用の弾丸は十数発用意してある。
それを過信しすぎたのか、最早男は右も左も解らない。

「………」
いっその事、この茂みを燃やしてしまえば誰か来るかもしれない。
勿論自分はボロクソに怒られる。小動物は焼け死ぬだろうし、人里離れた村を巻き込むかもしれない。

「……そこまでやっても、誰も気付かなかったら」

完全に終わりだろうな。そこまで考えて、男は自嘲気味に笑う。

本当に火を放ってみようかな。どんなに非人道的な事をやっても命は一つしかないし、
あれ故意に付けたんなら犯罪だっけ?やっぱ止めてもうしばらく迷ってみるかな、

男は思考を続けながらその足を止めない。
何度か分かれ道に出くわしているので、引き返して元の道に戻れる可能性は低い。

故に、歩き続ける。
『もしかしたら』開けた道に出て見覚えのある光景が広がっているかもしれないので。

『ひょっとしたら』この辺りの道に詳しい人に出会うかもしれないので。

無論そういった確率は非常に低いが、ゼロではない。現実に起こり得る事。


「………誰かいないかなぁ」
そんな大袈裟なことを薄く考えていると、


がさがさ、がさがさ。
「……良かったなぁ。」

何か人らしき、少なくとも男以外の生き物の気配。
男は自分の運の良さに感謝し、魔物である場合も考え銃を構え、

「自分から行くべきかな…」
茂みの中に入り込み、音がする方へと向かった。

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