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短篇
こそだひ-8
「今度はこっちが突っ込む側で良いんだよな?」「別にそこまで決まってる訳じゃないし……でもこれ突っ込む所あんのか?」
「何とかなったらいいよ、そうでなきゃあんな触手がどんどん生えて来やしないし」
『ぐるぉぉぉぅっ……ぐぁ……うぅるるるぅっぅ……』

今の今まで、狼人型は愛情と呼ばれるものを知らないでいた。より正確に言ってしまえば、愛情と呼べる存在から徹底的に離れながらの障害を過ごした末に爆発していた。
奪われるものだから。抱いてしまった時点で弱みとなってしまうのだから。そこに限って敵国は付け狙う。自分の父親がそうなった様に。だからそれが当然だった。

どれだけ淫らに扱われようとも、自分一人が耐えてくれればそれで済む程度の関係しか取り持たなかった。狂気的なまでの鍛錬に勤しんだ末に、冗談の様な結果で敵国に一矢報いる事が出来た。
それからどれだけの年月が経ったのだろうか。狼人自身に完全に埋まった状態で同じく爆発四散した張り型に、狼人型の執念とも言うべき恐ろしい感情が宿る様になっていたのは。
最初に相手をしたのは偶然爆散した帝国跡地を探っていた熊人の少年、その次にはゴミ漁りを生業としていた竜人の隊長含む彼等全員。

自分が受けた事を何のとりとめもなく晴らしてやろうと、目に着いた者を、拾い上げた者を、自分を使おうとした者を、誰彼構わず嬲り尽くしていた頃だった。張り型の形状が、双頭へと変形していたのは。

「凄いヌルヌルになってるって事は、それだけ気持ちいいって思ってる……」
「いや、全身そうだよ……でもお前、張り型だったのに入れる側になるんだな……」「でもちゃんと穴もあるし…ほら、こんな感じ」
『きゃぅぅ…る……あ……何、だ、この感情はぁぁ……!』

何事かと思っていたが、今になって漸く気が付いてしまう。狼人型の意識そのものを、暴虐な形状となった張り型が表していたのだと。
形を知った時にはそれまでの二倍の男根分の精力とどうしようもない焦燥、決して満たされない怒りまでもが宿ったまま必死さすさ感じる様に貪るしかなくなっていた。
自分を使おうとした者、自分を盗もうとした者、自分を夫婦の間で挟もうとした者、自分を封印しようとしたもの。全員を肉欲に染め上げて来て、それこそが唯一の復讐なのだとさえも思っていた。
今日までは。

「じゃあ俺はこっち……って言うか、これかな?犬っぽいし……あ、形がね。こう亀頭球ってえのが……」
「ちゃんと『ある』なら問題ないね……全身の力を抜いたらなんとかなるのかな……んぅ……」

それがどうした事か、と困惑の中で、柔らかに寄り添いながら身体を支えようとして来る人間と猫人が、此方の事を決して手荒くは扱わないと確信を抱いた、柔らかな至福が頭の中から満たされてくるかの様だった。
猫人が触手によって辛うじて象られている下半身の臀部を開き、肉穴がひくついている姿を見付けると何も言わずに顔を突っ込んで舌先で舐り回し始める。同時に人間は狼人型の前で、そっと寄り添いながら手探りで竿を弄り回す。
今まで味わった事の無い柔らかな慈しみと他人の体温によって蕩かされるかの様な気分を纏めて味わっていく。今までずっと味わっていなかった、真正面から狼人型そのものを見届けての行為。

友情に近い物であるのだろう。もしくはこれこそが狼人型が昔から延々と求めていたものの一つであるのかもしれない。今となっては何が引き起こされるものか。
狼人型の身体の上に跨る様にして人間が腰を下ろしていく。すっかり解れて粘液に塗れた尻孔の中に、触手の中では際立つ狼人自体の肉竿が入り込んでいく。

『ぐぉぉぉぉぉう……はぁ…ぁ……』

純粋な心地良さを味わいながら、同時に背後に控えていた猫人の竿がそのまま挿入されていく。本来の尻孔の様にきゅう、と引き締まる所で腰を止め、小刻みに浅く揺らしながら三人同時の行為が始まった。
温かな感触と肉壺が引き締まり、双頭の張り型で犯しているのではなく、左右に挟み込まれながら犯されている。これ程の愛情、友情、いずれにしても温かな感情を宿したまま。
安息だった。延べ二百年振りの安息と、純粋な快楽が何度も弾け、そして。

『ッウォォォォォォンッ!!』
「あ、おい……あ……」

そして満たされた狼人の魂は、二百年余りの地獄と焦燥から解放され、張り型と共にさらさらとした光の粉となって消えていく。
猫人が手を伸ばしても既に遅く、そこにあったのは随分と劣化しきった木屑の山でしかなかった。

「…………」
「消えてしまった……俺の六桁……」「やっぱりそこか」

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