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短篇
こそだひ-2
「本気で何考えてるんだ。たかが棒切れに六桁払うって……それも木の棒だろうに」
「最近マンネリしてたし暑くてやる気起きないし、そんなんだったらたまにはオカルトに走るのも良いのかなーって」
「普通に怖い話聞いてそれで良いだろ」「セックスは別だろ」

冷房の駆動音に負けないセミの鳴き声が部屋の外で今日も元気に響き渡っている。共用の部屋の中、ベッドの上に座っている人間の隣で猫人は言い訳を続けている。
人間と獣人とがどちらも使える部屋が一部屋しかなく、年齢や趣味も近く、そんな流れのままに身体まで重なり合う様な仲になってしまった訳である。

普通よりもやや低めの身長をしながらも、見た目やらは全て平凡にも見える黒髪黒目の人間はむっとした表情を浮かべている。
その目の前では人間よりも背丈が高く、引き締まった身体を備えた赤毛の猫人が申し訳なさそうな表情を、少しも浮かべてはいない。額を擦りながら微妙な表情を人間に返しているのが見えている。
お互いの貯金に関しては文句を言わないと取り決めが施されたが、月末に使い過ぎたからだのといった理由で金銭のやり取りもたまにある。というか頻繁にある。まだ月初めであるというのに、いきなり六桁の買い物を。
それもこんな卑猥な道具のせいで。

「仮にその伝説が本当だったとしても、六桁はぼったくり過ぎだろう……」
「そりゃあ道具じゃなくて出土品とかその辺の領域だからな……でもそれっぽくない?」
「なんで爆発したのに張り型だけは残ってる?」「それっぽくない?」「誤魔化すなよ」

敢えて小さく作ったという話と矛盾している通りに、ケースの中から取り出されたばかりの木製の張り型は随分と大きさ自体も立派だった。人間や猫人のそれよりも遥かに巨大だ。
如何にもな竿が二本左右に伸びて繋がっている双頭の形状が成されており、そのどちらも立派を通り越してご立派な様相を保っている。どちらも人間の二の腕並みの太さを備えている。
それぞれの竿共に太さもえげつないを通り越して挿入されたら死ぬかもしれない。上側の竿には狼人の竿を模しているのか根元から中程まで疣付きの球が連なっており、拳並みに太い雁首と先端はヤリの様に尖っていた。
もう一方の竿は獅子人含む猫科の竿を模しているのかどうかさえ怪しい程に、びっしりと返しの付いた突起に無数に包まれているのが見える。張り方でなければ拷問器具か何かにしか見えない程だった。

呆れた顔の人間が猫人に差し出されるまま持ってみると、木製という割にはずしりとした重量感と存在とを伝えているのが分かる。張り型というにはそれ以上に特殊な物に思う様な気もしていて、
やっぱりただのえげつない双頭ディルドでしかないと猫人に返した。

「いざとなったら俺が買ったみたいにネットオークションで倍の値段で売ってしまえば良いさ……だから」「使わないぞ」
「えー?また普通な感じでヤるのは飽きたって言ってなかったっけ?」
「だから言ってないって……返しで抉られる度に、色んな物が失われそうになるとは言ってたけどさ……」

身長の差もあるにはあるが、お互いにその日の気分でどっちがどっちに突っ込むのか決めているくらいの間柄になってしまっている訳で。
人間が猫人に突っ込む際にはそこまでの問題らしい問題は無い。猫人が人間に突っ込んだ場合は、竿の表面に生やされた肉棘、首元に噛み付く癖やらと付き合う必要がある。
大人しく人間がずっと突っ込んでいればいいのではないかという疑問もあるだろうが今は関係が無い。お互いにそういう間柄なのだ。本当に。

「ここまでガチガチな物をお互いの尻に突っ込むって形になるんだろ……どっちも無理、死ぬ」
「……ちゃんと小ぶりなサイズですって載ってたけど、確かにここまででっかいのは予想外だったけどなあ……写真もあんな感じだったし……」
「それにお前の中とか、ナニとは……気になりはするけど、飽きたりとかは全然してないし」
「それは……何だよ、じゃあ俺が六桁出した意味とか無いじゃん」「出す前に分かれよ……ん……」

こうしてお互いに口づけを交わして、流れる様に身体は絡み始めるのだった。ベッドの横に置かれた張り型を放っておいて。

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