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短篇
悪良丸硬-4
穏やかな公園にはまだ疎らに遊具が備わっているし、用意されている水飲み場も綺麗でもある。いい場所であるのは違いない。トイレから異臭が漂って来る様な事も無かった。
木目調のペイントが施されて、男性用と女性用で綺麗に分けられている。綺麗に使おう、とメッセージが描かれた看板を見通しながら、入り口のすぐ脇で事が済むのをただぼんやりと待つ事しか出来ない。

「おらっ!ふんっ!もっと気張らねえと腹ン中ぶち抜いちまっても知らねえぞぉっ!」
「ひがぅ、くがぁぁっ!?ご、ごめんなさっ…あぁーっ!?」
「…………」

今トイレの中を覗き込めば、昨日の路地裏で狼人が交わされていたものと殆ど変わらない光景を見る事が出来るとの確信がある。というより肉同士がぶつかり合っているばちゅばちゅという音が出入り口の傍らで確かに聞こえてさえいるのだから。
上ずった鳴き声の混ざった犬人の言葉というよりは鳴き声で、合わせて溢れている狸人の声も荒っぽい息遣いの混ざって興奮しているのだとはっきり分かる口調になっている。
読み取れた所でどうする事も出来ない。声と音が聞こえている間にも、何とも奇妙な感覚が人間の中で溢れているのが分かる。

覗いてみたいという様な野次馬根性である筈も無く、音だけで興奮しているのならもう少しだけトイレの中へと身を乗り出して覗いている。
恐怖という割には萎えたり背筋に寒い物が走り抜けている事も無い。この場で逃げて道に迷って別の誰かに捕まってしまったのならば、それを狸人に探られる様な事があったなら。
今度は逃げられない。寧ろ人間本人の意志で歩みを進めなければどうにもならない程の事態に陥る。狸人に肩を回され、意気揚々と何処だかいやらしい場所へ赴く。の割には興奮も恐怖も無い。変な感情が回っている。満たしてくれている。

「おうっ!じゃあ種付けしてやっからよ、精一杯…ぬぁぁっっ!」
「きゃうぅぅぅぅっ!?はっ……ああぁぁ……腹ん中がぁぁっっ…あぁ…ぁー……」
「…………」

鈍くとも何が起こったのかは分かる程に声量は更に大きさを増しているのに合わせて、じゅぶぶ、と鈍い音が響く感覚まではっきり人間の聴覚でも捉えられて、予想よりはげんなりとしていないものだ。
やる事も無いので携帯を弄りながら務めていたが、後始末を待ってから後はどれだけの事になるだろうかなと、

「結構急いだからこれでいいだろっと…さ、行くぜ」「放っておくんですか」
「別に殺したって訳じゃあねえし、この辺にはまだカメラ配備されてないんで大丈夫だ」

いやに手慣れている事を警戒するべきか、それともそこまで知っているんですね、とまだ暮らしてから一年も経っていない狸人の馴染み具合を驚愕するべきなのかもしれない。
肩を回されてぼふぼふと叩かれながら、最後にちらり、とトイレの中を見ると床に寝かされた犬人が、舌まで垂れた状態で盛り上がった精液の海でぐちゃぐちゃになっている姿が目に入る。
焦点まで定かではない口元がだらりと歪んでトイレの床で笑っている姿を見て、露骨に人間は自分の胸が思いっきり高鳴るのが分かった。感じた。感情の変化以上に、急に全身に血液が回り始めていた。

「あ…ちょっと厄介、かもしれませんね」
「おうどうした?この場で逃げても俺はもうお前の匂いを覚えたから、絶対に追いかけられるぜ?」
「……僕もあの犬人とか…狼人みたいな目にこれから貴方に遭わされる事を、想像してしまいました」

見なければ良かったと思っている間に、狸人の太い腕が回される身体が震えながら急に縮み上がったのが確かに感じる。今更になってこの傍らの男に、そしてこれからの隣人にこの上ない恐怖と本能としての何かを感じ取れてしまっている。

「ってぇと、あいつ等みたいに?これからお前が俺に脱がされて、このチンポを突っ込まれてあんあん鳴かされるのが怖いって奴か?って、今更かよ?」
「そうみたいです。これくらいに変な事になってしまっているのはちょっと予想外でしたけど……貴方が居なければ、また道に迷ってしまいそうで…」
「……うっし、じゃああいつ等とは違った感じにヤッてやるぜ?それで満足したら今後ともお前は俺の……」

そこまでは決定事項になってしまっている現状には恐怖よりも何とも言えない諦観の方が強く。
かと言って狸人が此方を見下ろし視線を合わせながらにっと笑みを浮かべている姿は荒々しくも何処か愉快そうで恐怖までは感じない。自分が貞操を奪われるのはどうなのか、そこがまだ分からない。
無様に扱われて、あんな風に雑に捨てられるのが怖いのだ。そこまで漸く理解した時には、狸人の部屋の中へと連れ込まれ、ごくごく普通に部屋に鍵をかけられていた。

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