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短篇
サンドイッチ-5
何も問題は無かったものの、たまには体勢を変えてみませんか、と言い出したのはライオン側からであった。
すっぽりとうつ伏せ、または仰向けに寝るだけの人間も、仰向けの時は龍の胸毛と顔が真正面から向き合うので少し恥ずかしい感じがしていたので。
布団がこんな事になってから今更と言われたならばその通りでもあるけれど、たまの息抜きとして、ライオンと龍との上下が入れ替わりでもするのか。
そのくらいの変化だと、思っていたのに。

「むっ…ふ、ふぐぅぅぅ……んっ、これ…や、ま、待って、ぇ…っ……」
「何か問題でもありますか?ほおら、いつもの様に隙に抱き着いてくれてもいいんですよ……」
「別に雄同士なんだから気にする必要も無いんじゃあねえの?何せ俺達は『雄布団』なんてな、ははは……」

龍の言葉さえも遠く聞こえる。物理的に遠い上に、身体の隆起が声をはっきりと聞こえさせてくれなくもなっている。
変化としては何とも単純で、変化がもたらしてくれる効果はどこまでも圧倒的にさえ思えていた。
体勢の関係でライオンに身体を抱え上げてからぎゅっと抱き着かせられているという、今となってはすっかり慣れた感覚であったが、今回ライオンは人間の身体を反転させてくれたのである。
上下ではない、前後に。鬣のふさふさした感触が足元にふわふわで触れるのが分かって悪くは無いと思ったのも束の間。腹筋の凹凸が顕著に感じられる感覚で、
自然と下ろされた先、人間の顔の真正面には、たっぷり膨らみ切っていたライオンの睾丸がどん、と鎮座しているのが嫌でも目に入り、驚いている間に龍がいつもの様に圧し掛かって来た。

吐息が後頭部と首筋に触れる感触から龍もまた向きを変えていて、頭まで覆う感覚にぐにゅ、とその顔を使って睾丸の感触を堪能する事になった。
当然の様に、雄として漂っている匂いまでも溢れているが故に、人間は自然ともがこうとしてはいるが、ライオンの膂力と真上からの龍を振りほどけないのである。

「んぐ、はぁぁぁ…いや、これは……っんぎゅ……むぅぅぅぅっっ……!」
「はぁ……顔まですべすべしてて、中々に気持ちいいものです、よっと……」

柔らかく短い毛並みに表面が覆われて、分厚い皮の表面に鼻先と唇が自然と埋まり込む。ふん、むふ、と押し潰される柔らかい感触に鼻息が間近で浴びせられている。
その感覚も心地いいものなのか、ライオンが足元で喉を鳴らしているとは感じ取れないまま、人間は直接、股間から鼻先へと叩き付けられる猛烈な雄の香りに身体を震わせていた。震わせるしかなかった。
常に放出している熱気に合わせてごぼごぼ、と音さえ立ちそうな隆起と鼓動に合わせて震える感触を肌と鼻先とで味わえる。汚れの籠った汗や皮脂臭の類ではない、鼻先からぐんと脳内を誑かせてくれる様な、純粋な程の雄の香りだ。

暴れる身体をぐっと更に抑えられると、更に顔が深々と玉へと密着する。この状態で普段の様に眠気が誘発される筈も無いままに、自然と興奮している人間。こんな事は有り得ない、と思いながら、もぞもぞと下半身の方が忙しなくなっていって。

「おぉ?興奮して勃起したなんて事はねえよなぁ…もう眠る時間で…まあ休日で夜更かししてるんだけど、もうそろそろ寝ないと駄目なんだろう…なぁ……?」
「ふぐぅぅ…そんな事、言っても…こんな風にされちゃ……とっても、良い匂いで……」
「不思議ですね…雄同士の匂いは基本敵対するものであるのに…まるで貴方が、雌として雄の匂いを受け止めている様な者ではありませんか……」
「あなた達、布団じゃ……」
「その通りだな、布団にはこうして包まってやらないと……」

言葉が封殺されている間に、もぞもぞと更にライオンの腕が人間の服を引っ張る。何をされようとしているのか分かっている。それでも、良い匂いに押し付けられるがまま、何も出来ない。
龍が上半身の服、ライオンが下半身、と役割分担をそのままに、寝間着も下着もぽいぽいと放り捨てられて人間の身体を丸裸に剥く。素肌に触れる毛並みの心地よさ、荒さと開放感、地肌越しのぬくもり。

「前から思ってましたが、毛並みと直接触れ合った方が温かさを感じるでしょう…これから寝間着も必要ありません、良いですね?」
「そうだなぁ…俺も裸だからって寒い思いはさせる気ねえし、それでも良いよな?な?」

顔を赤らめさせていた人間には、位置の関係で見えやしなかったが。ライオンも龍の顔も、何とも楽し気な微笑みを浮かべながら、受け入れた人間の身体を緩く撫で回していた。

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