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短篇
3ドイッチ-3
「もぎゅ……んん……」
「おはようございます、気分は如何ですか?」
「いかがですか、と言われても…すっかり慣れている様な気分で…んん……」

今日も今日とて、ライオンと龍に挟み込まれた布団として正しい状態で人間は目を覚ます。ふかふかした鬣が頭近くを覆っていたり、
龍の体表にびっしりと生えた毛並みのもしゃもしゃした感触にもすっかり慣れていた。言葉の通りに慣れていて、少しだけ匂いが違っている事にも気付いている。
しっかりと下からライオンが腕を絡ませて人間の身体を抱きしめている上に、龍が圧し掛かってくれているので離れる気配は無い。

部屋の片隅には枕だけがぽつんと置かれている。ライオンの鬣の上に乗せてしまおうかとも思っていたが、収まりが悪くなったので使わなくなった。
暖かな感触に自分の匂いが奥底からじわじわ湧き上がっている様で、身体を動かすのに合わせて龍も目を覚ます。いびきと合わせて感じる細かい振動さえも心地よく、早速寝ぼけて首元にすり寄って来る鼻息の擽ったさに眠気はあっさり消えていく。

「おう、おはようさん。今日行ったら休みなんだよな?」
「んー…そうなっちゃいますね……と、言いたい所ですが、二人とも身体を洗ったりはしないんですか?」
「汚れ仕事の時には」「乾くのに時間掛かるんだから仕方ないだろ、ほら行った行った」

話している間にライオンが人間を抱え上げながら身を起こして来たので、人間も合わせて身体を起こされる。眠気は吹き飛び、胸元にちょうど埋まる頭に温かい毛皮からも離れなければならない。
思わず声まで上げてしまいそうな寒さ、部屋の中に備え付けられた暖房は部屋を着実に温め続けているが、タイマーによって朝出掛けるまでには切れてしまう。遅れてしまわない為の内容だ。
ライオンは掃除をする。龍は昨日の夜の残りを使って朝の支度をてきぱきと始める。毎日の掃除のお陰か部屋の隅々は輝いてるかの様で、龍の作る献立は再利用してもいるがぐっとありがたい。
ありがたいのは間違いないが、それ以上に少しだけ、昨日よりも、最初にこうしてライオン達と出会った時よりも気になり始めているのが、彼等の、布団達の臭いだった。

普段から使っている分自分が眠っている間の寝汗やら頭を擦り付ける臭いとはまた違った、強いて言うのならばライオンからの獣臭さと、爬虫類らしい龍からの生臭さである。
何気なく聞いてみた通りにライオンが掃除を終えた時には自分の二の腕まで丁寧に石鹸を使って洗っている様子を見た覚えがある。龍は台所の仕事を行っている時にはエプロンを嵌めているが身体を洗っている様子は見た事が無い。

「ほれ出来た、さあ召し上がれってな」「支度に忘れ物は無いですね?」
「……はい、いただきます」

と言っても布団であるならばこういうものなのだろうかな、と感じながらも割り切って食事に勤しむ事にする。人が増えた、違う、布団が人型になった分色々と便利なのは間違いない。
朝に出掛けて夜まで平日らしいイベントが待ち構えているし、戻った後には布団が待っている。夕食と共にぴかぴかになった部屋の中で。風呂の用意も済んでいて、間違いらしい物は殆ど持ち合わせていなくて。
だったらまあ良いか、と思いながら、今日も今日とて出かけていく。昼は適当に済ませる。夜遅くまで作業は続く。頭の中で吐き出した溜息は数える必要すらないくらいには多いが、それでも立派にこなせた。休みを願って頑張った。

「ただいまー」
「ええ、お帰りなさい」
「……ふみっ」

自分を迎え入れてくれるライオンの股間には、普段と違って直立してる分丸々とぶら下がっている睾丸が重たく揺れる様子が露わになった。
ついでに寒さと合わせて抱き締める事もすっかりいつもの慣習になりつつあり、柔らかく熱された鬣からは、間違いなく人間由来ではない甘い獣の香りが隠し切れなくなっていた。

「今は食事の準備中ですので、お風呂に入ってしまいなさい」
「はい……うん?」

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