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短篇
熱々の話9
じわじわとした量を長い時間を掛けて流し込む、と言われているものであったが、あまりに注がれる量は莫大だった。
不穏なまでに張り出す程に下腹部は冷え切った精液によって人間の身体にも顕著な膨らみまで出来上がっている始末。
合わせて蜥蜴人が返しを最後まで引っ掛けながらずるん、と引き抜いた端に溢れ出ない程に重たく、中身が詰まっているものを。

数分の間暫く余韻に浸らせながらやっと温かさが移り始めた蜥蜴人がゆったりと嗜めて、意識が飛び掛かっている人間を繋いだ。
当然甘い言葉と気持ち良かったですよ、これでもう忘れられなくなるかもしれませんねと、脅迫と合わせた勝利宣言も止まらず、

「くひぃぃぁ…あ、あぁぁ……あ…な、か……まだ、出てく、うぅぅっ……!」
「後でクリーニングをしなければいけなくなりましたねえ…ほら、ちゃんと力まないと、お腹の中で固まって…孕んでしまうかもしれませんよ?」

腸内の温度にやっと粘度が僅かに失われた精液が塊となって、開脚しながら座らされている人間の尻孔から音を立ててひり出される。
表面まで固まっている精液の質はまるで豚人か何かの様。蜥蜴人が指を纏めて突っ込まなければ、精液が凝り固まったまま出て来ない程。

最後まで塊状の精液の凹凸となって前立腺を微細に刺激しながら、交わってる間触れられる事は無かった逸物からはとっくに薄まった精液を吐き出している。
そして、片手の指が四本も揃えられて掻き出されるくらいに柔らかさを増した腸肉と、何も痛みは無く快楽さえ覚える人間は、既に自分が手遅れであるとも分かってしまった。
絶望を塗り隠しているのは、じんじんと身体に響く甘い痺れ。大柄な相手の身体に縋り付きたい。あれだけ、離れたかったのに。

「あ……ああぁぁ…あぁ……」
「はい、良く出来ましたよ…こんなに出したのも随分と久し振りなんですけどねえ……」

古新聞の上には腸液と混ざってもしっかりと盛り上がって、ふるふると別の生き物の様に震えているかの様な蜥蜴人の精液。
数部を纏めて束ねている紙面でも完全には受け入れられなさそうに、完全な山となった精液を吐き出し終え、人間の尻孔は元通りになっていない。
上下左右、ヘミペニスを纏めて受け入れてしまっていた身体というものは尻孔が一層柔らかさを増し、身体の奥まで疼きが止まらない様な有り様であったから。

だから、細腕を蜥蜴人に絡ませる。何気なく交わされる舌先に舌まで返してしまう。
きついくらいの精液の匂いが混ざっている部屋の中で、分厚い胸板に添えられた身体が奇妙なくらいに落ち着いている。

「貴方の熱だけでなく、貴方の事も、好きになったみたいです…もっと私が欲しいならば、またこの部屋に来て下さい…ね?」
「あ……あぁ……あ……」

服の片隅から取り出した携帯で、ぱしゃり、と遠慮なく写真を撮りながら、蜥蜴人は笑い掛ける。
断っているならどうしてしまうか、といった無言の脅しにも従うしかない一方で、フラッシュを確認すれば、また従順に人間の逸物から先走りが飛んでいくのであった。

「よろしい…では、貴方の名前を改めまして」「ちょっと待ったぁぁ!」
「待った!」「俺との愛はまだるっこしかったのか!」

呼び鈴も鳴らさずにやって来た、蜥蜴人の部屋の中に乗り込んで来たのは、嘗てそういう関係で間違いなかった犬人だった。
合わせて竜人だった。その次には羊人だった。

何事かと思っている間に、人間が上着を抱えて蜥蜴人の胸元から離れ、服を引っ掴んで窓から飛び出す。
あ、と叫びながら犬人がその後を追う。何かと考えている間に、気を落ち着かせている間に、竜人がまだスリットから逸物をはみ出させる蜥蜴人に口を開く。

「急で悪いが聞いてくれ…あいつ…あの人間、夏は暑いからって俺達みたいな奴に靡いて、冬場はあの犬人とかモフモフな奴に靡くんだよ……」
「うおぉぉぉぉぉ!洗いざらい喋って貰うぞおぉぉぉ」
「……はぁ?」
「最初はそう思ったんだけどですね、なんかマジだなって…急に居なくなったと思えば、偶然部屋に入るのを見て……」
「そんな……そんなどこぞのサイ・スロードみたいな真似を、彼が?」

何気なく振り向いてみても、そこに人間の姿は無い代わりに窓は開かれている。服も引っ掴まれて一応ズボンと上着は持って行った、らしい。

「許せる?今身体に残ってる気持ちいい余韻とか、抜きにしてさ」
「不思議ですね……自分のしでかした事を棚に上げなくても、どうして彼の事がこんなに許せないんでしょう……」

毛並みと鱗を纏った者達、嘗て人間に寒いからと縋り付かれて、冷たいからと興味を持たれた面々、いずれも大柄な雄ばかり。
彼等が大手を振って人間を追い始める中、炎天下にへばり、人間の家がどうなのかと迷い、犬人は人間を見付けられない。

「俺も夏に!」「しばれる冬の季節に!」「あの暑い夏の海に!」「車が動かなかった季節!」
「俺も」「私も!」

ただ何処までも莫大になった被害者であったりする者達は留まる事を知らず、まるでサイ・スロードみたいではないかと誰かが語る。
夏の熱気にも萎える事さえもなく、冬の寒気には縋り付く様な劣情と熱気と。

「毛皮も鱗も持たない、人間だからこその季節対策だったのでは?」

そんな声が上がる中、今日も日は巡り彼等は人間を探す。

「ああ、あったかいですね…」「そ、そうかい?」

そしてまた人間は晩秋に、もふもふな狼人の尻尾に戯れていた。

【終】

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