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短篇
ふゆ-8
「…ふぅぅっ…!少し頑張り過ぎてしまったかな…あぁ…こんなに零してくれるなんて…ありがとう……」
「かは…ぁぁ……ぁ……ぅ……!」

息も絶え絶えだ。声も溢れ出る事は無いが、それ以上の何かが、精液とは違って人間の心そのものに巣食われてしまっている様な気分。
肉棒が完全に露わになった途端に股間にするするとしまい込まれて行きながら、既に散々に精液を散らしていた地面は綺麗に元通りになっている。

「お陰で、大分力が…おぉぉぉっ…満たされる…これ程の強さは、珍しい……君が私に気付いてくれて…本当に、良かった……!」

人間の意識が飛び掛かっている間にも、ぼんやりと光を帯びるのは崩れかかった社の中身であり、猪人の身体が柔らかな金色に包み込まれている。
全裸のまま屈強な筋肉に包まれた身体は毛皮を穏やかに靡かせて、満足そうな言葉を語りながら人間の身体を持ち上げ、その腕に抱く。
強固な精液によって固まったまま、膨れ上がった下腹部は動きに合わせてたぷたぷと揺れているのが見える。
人間の顔は涙と涎まで溢れているのが見えては、猪人はそっとその顔つきを舐め回して、綺麗に磨いていく。

「あ…ぁぁ…ん……」
「見たまえ、君の力でここまで…力が戻ったよ…今まで裸なのも、この通り……むふ…ふふぅっ……」

薄い唇にそっと分厚い舌を這わせていると、その口元から人間の舌が帰って来るのを感じ取り、猪人は嬉しそうに笑う。
牙を剥いてにっこりとした微笑みを絶やさないままに人間の口の中まで丁寧に舐め上げ、涎と唾液を溢れそうな程に注ぎ込んでやった。
惚け切っていた人間の表情に僅かに光が戻り、その視線は猪人と合わされる。見上げている中で、社の中に人間の力が回った事が、至福だと思ってしまう。

偶然であるかもしれないのに、全身を疼かせる快楽の残滓と甘ったるい余韻が人間をこの場から人間自身の意志で離してくれない。
何処までも猪人は逞しい身体をそのまま、人間の身体を抱き留めていてくれるのだから。

「……これで少しだけ、神に近付けたかな…どうだい…似合っているかな?」
「…………」
「大丈夫だ、君にこれ以上何かをしようというつもりは無いさ……こんなに今日は頑張ってくれたのだからね……」
「……あの」
「何かな?」
「……それだけ、ですか…?」「そうだけど?」

全身を包んでいた光が収まり、猪人の耳元には金色のごく細い鎖でつなぎ留められていた、同じく金色の鈴が光り輝いていた。

それ以外の衣服は前と全く変わる事は無く、人間を抱きしめている肉体からその股間で大きく揺れている玉袋も、全てが剥き出しであった。

「あるとないとでも違うからね、だから改めて礼を言おう…君が居てくれて、改めて…良かった」
「っ…」

満面の笑みを浮かべている中、そっと地面に下ろされながら人間は顔を赤らめている。そうするしかない、と思っているから。
捧げてしまったお返しを逆算して与えてしまっただけに過ぎないものだ、と。神である相手と付き合ってしまったからこうするしかなかった、と。

「……もう、君を強制するだけの力はなくなっているよ…暖かくして寝なさい…」
「……えっ、えぇ……っ!?」

住宅街である事に辛うじて気付き、声を押し殺すのが人間の精一杯であった。

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あきゅろす。
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