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短篇
ふゆ-5
どこまでも感触ばかりが鮮明と言う訳ではない、その静かな空き地が元々は猪人を祀っていた社であるとも初めてだ。
それでも人間からしてみれば随分と見慣れている様な気がしていた。何をする気であるのかも分かっていた。声が出ない。
出たとしてもどれだけ叫んだ所で、近くに聞こえはしないだろう。抱き締められているまま、もぞもぞと身体を動かされる。

太い両腕が繊細な動作で、人間の頭を撫でた。胸元を撫でるとぞわぞわとした感覚。尻肉、そしていつの間にか張り詰めていた股間にも触れる。
服を崩す事は無い。熱っぽい吐息を浴びせながら、柔らかくも芯の通った毛並みに包まれた腕が、身体が、人間を擦り上げている。

「っひ…あぁ…ぁ……っ…!」
「……熱いのならば…脱いでくれないか…他でもない君が…この目の前で……」

猪人の算段が全て分かっている。あくまで神の使いが救ってくれた身として、人間自らの意志によって、捧げてくれて欲しいのだ、と。
何を思ったとしても、断ったとしても、実際に断った方がずっと良かったかと言えば、人間には分からない。
捧げるしかない。既に救われた以上。あくまで猪人は柔らかな口調のまま、柔らかに言いながら、その身体が一旦離れる。

このまま逃げ帰るよりもずっと、この何もない寒い夜の中の方が居心地がよく思えるなんて感じたくなかった。
そうでなければ。少しだけ待ち構えながらも、興奮は冷めていない。猪人の毛並みは人間と触れている間に少し乱れているが、股間の玉は変わってもいない。

「……は、はい…」「そうだ…ゆっくりで良い…ほぉう……」

言葉の通りに人間は、ゆっくりと猪人の目の前で、裸体を食い入る様に見つめながら衣服を脱ぎ去っていく。
冬場に備えた重ね着でありながら、徐々に体のラインが露わになり、股間が膨れ上がっている様子を見下ろしてだろうか、猪人が声を漏らすのが少し恥ずかしく感じて。
それでも、手を止められないのが不気味なくらいに怖く思える、そして猪人を前にして興奮もしている。
やがては肌着のみになり、靴下までも脱ぎ去って、ひやりとした土の感触を足裏で味わった。
下着をきっちりと脱ぎ去る。恥ずかしさも何も無いが、猪人を前にしてまたぞくり、と胸が高鳴ってしまう。

「…く…ぅぅ……」
「さあ…おいで…こうして抱き締めてしまえば…君はもう……」

自分の物だ。そんな調子で語られる猪人の言葉が、人間にはとてつもなく甘美にさえ聞こえていた。
何も言われずとも、生肌で抱き締められる毛皮の感触は、予想よりもずっと柔らかで、そして猪人は温かな物。
その大きく膨らんでいる堅肥りした腹部に、既に先走りの透明な汁が擦り付けられようとも、少しも嫌な顔を浮かべて居ないのだから。

「じゃあ、なるべく力を抜いてくれよ…私の身体に抱き着いたまま…ほら……」
「くぅ、ぎぃ、っ…ひは、あ、あぁぁぁ…っ……!?」

目の前で唾液の絡んだ指先がぱっと腰から下に落ちていき、何も躊躇いなく人間の尻孔に差し込まれる。
ずぶ、と予想よりも遥かに受け止められ、そのまま前立腺を押し上げられる感覚は当然未知のもので。
何も分からないまま、透明な汁が人間の逸物から飛び出していく。
そんな人間の身体を再び片腕だけで包み込む様に抱き締めながら、猪人は深くまで指先を捻じ込んでいった。

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