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短篇
球-3
「明日だったら許してくれましたよ」「……その体で、良くやれたよな」

食事が終わるまで生々しい話は止めろとの忠告の元、最後の一口を黒竜人が飲み終えた途端に人間は切り出してしまっていた。
そして受け入れられた。深緑竜人以上の体躯、そして立派に膨らんだ股間は何かと目立つもの。
と思いきや、落ち着いた色合いに寡黙な雰囲気、きゅうくつでも自分を収める調子からちっぽけに見えている。
頭一つ半程の差があるというのに。人間との差に至っては、頭が凡そ胸元に来る程。

「後は蜥蜴人の方を探せば完遂出来るんですけどね…」
「やめとけ…蜥蜴人までとなると、流石に難しいっていうか高望みで」「呼んだかい?」
「ええ、蜥蜴人であるなら呼んだんですけど……」
「ああ確かに、俺は蜥蜴人だけど…種族が必要だったら……」

振り返ってみると、深緑の竜人より当然の様にやや大柄な、白い鱗に身を包んだ蜥蜴人が、赤色の瞳で人間達を見下ろしていた。
蛇に近しい様にも見えるが、角が無い事を含めても彼が蜥蜴人であるとは見立てから分かっている。

「ええ、お時間を頂ければ……」
「おいおい…いや、こんな事がマジにあっていいのか……」

良いに決まっているかどうかはそれとして。人間の再び輝き始めた瞳から、凡そ全てを悟らざるを得ない。
一見細身に見えてはいるもののぴったりと体格のラインが強調されて見えている中、ズボンの前、
つまり股間には立派な膨らみが薄く浮き上がっているのだから。かの黒竜人と全く同じ様に。

そして人間の頼みに関しても、驚いた素振りさえ見せずに受け入れてしまったが、明日になったら、との事である。
明後日以降は人間の都合がやや怪しくなるが、色々と行いたい人間からしてみれば一人ずつとも時間が惜しい。

「……と言う訳で、二人一緒で良かったらお願いします。自分含めて三人で」
「分かった」「構わないよ?」

それぞれにお願いを申し出た結果、これもまた実に都合よく受け入れてくれる。
短編小説もびっくりな受け入れられ方に、人間は涙ぐみそうなぐらい感動していた。

「種族の多様性って、こうも素敵とは…この学院の中に全て揃ってるとまでは思いもしなかったですね」
「マジで調べる奴がお前しか居なかったからじゃないか?」

竜人の手伝いをしながら、人間は心底嬉しそうに語り続けている。試験管内の血液を成分ごとに分離する作業もはかどるというものだ。
防水カーテンにブルーシートまで用意する辺り、何をしようとしているのかも分かるし、考える程にげんなりとするものがある。

竜人が調合した液体を血液のある成分に一垂らしするだけで、プレパラート全面に細かな紐状の成分がびっしりと覆われた。
しかし強度自体は弱いもの。犬人の血液とはそこまで合わなかった、らしい。

「それで、この作業が終わったらもう自由に使っていいんですよね?」
「ああ、機材の関係でここまでだから明日には…うおっと」

鼠人の血に反応した薬剤によって、今度は巨大な爪を模した物体が竜人の胸元を軽く引き裂いた。
咄嗟に身を引いたお陰で服だけにとどまり、今度は自然崩壊する事もなく机の上で暴れているのが人間にも見える。

「じゃあ机とかも良かったら隅に寄せて下さいね…マットレスも」
「そういう目的じゃないんだよな?」「そう言いましたよ、ちゃんと」

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あきゅろす。
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