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短篇
エロいかなヒーロー?6
「きっと性欲を抱いた他人に傷付けられると爆発するんでしょう」
「成る程、納得だな。通りでお前以外だと、実に容易く爆発してしまう訳だ」
「どこまでの感情を抱くかはそれとして、近しいものを感じ取っている筈です。そして爆発している……結局、爆発させた側の自業自得でしょうか」
「人によるとしか言えないものだな……現に俺は腹立たしい、折角急拵えで用意したというのに」

既にガタが来ているではないか。分厚い金属の防護壁にバリアまで貫通するレベル、ヒーローが貼り付けにされていた箇所には無数のヒビと亀裂が走り、焦げて崩れたヒーローだった破片が黒い人影を描いている。
壁には赤を基調としたペンキ缶を丸ごと放り投げたかの様な模様と生臭さをまだ仄かに伝えており、ヒーローを好きにする様に、と指示をしていた下っ端だった肉の破片がこびり付いていた。装着していた脳波計は見る影も無い。
どんな感情をヒーローを弄んでいる間に抱いていたか、二人のヒーローと何人かの人足の犠牲を経てやっと確定し、爆発の理由もある程度は読み取れた。故に発表すると龍人は満足気に頷いた。
爆発事件が発生してからまだ一月も経っておらず、表立った中でも六人のヒーローがまた別のヴィランのアジトや隠れ家で、ヴィランが不意に爆発した事件が何度か、関連する死傷者は二百の大台に乗ってもいた。

高層ビル内部で元々ヒーローであった、今では醜悪で変態的なヴィランへと作り変えられたかの獅子人が爆発しなければ、被害を受けた人物は半分以下に減ったと言うのに。
大なり小なり、サイバネティックな技術は大きな改変を齎して力を分け隔てなくヒトに与え、そして輝石を埋め込む方式は深く根付いた今だからこそ壮大な脅威と成り果てる。
こと無様に打ち負かしたヒーローを性別も何も関係無しに犯したがっている様な好事家はヴィランの中にも多量に含まれており、そんな相手に限って爆発に巻き込まれて帰って来ない。

「それで、この先どうしますか?人体改造した形跡があるヒーローを犯すなと触れ込みを出す様な事ではありますが」
「……逆に言えば、性欲を高めればそれだけ爆破事故は増えるという事だな?」
「そうでしょうね、興奮剤を投与しても、意識によって輝石の力を引き出せるなら、輝石自体に錯覚させて爆発させる事も理論上は可能です」
「やってみてくれないか?」

軒先に止まった小鳥に話し掛ける様に、龍人は闇医者に対して言葉を告げる。見下ろしながらなのはその体格の差もあってか当たり前の話。輝石単体ならば確かに数個無事なのが存在している。
この部屋の中に輝石を配備、擬似脳波を送り出せる機械を造る、性欲のパルスを飛ばして偽造させる。戦闘によって負傷しているヒーローを爆発させられたならば、ヴィラン諸共。
しかし、闇医者にはそこそこの芯があった。流石にそこまで首を縦に振り続けてはやがて破綻してしまうのだから。一方で龍人の方も、何処か闇医者の、無機質な表情を不思議に思えてもいた。

「どうして?」「俺は改造を受けていないだろう?だから俺には関係ないからな、どうなろうとも」

呆気ない程の答えを前に、当然闇医者は従う他無かった。一度決めたならば最後までやってみたいというふざけた凶悪な熱意と、そして闇医者に対する期待の込められた、
それだけを見るならば、可愛らしさすら感じる様な目線と膂力を備えた顔立ちだったのであるから。

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あきゅろす。
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