十六、
和泉が高杉に攫われた。
その言葉を聞いた瞬間、身体が強張る
あいつが怪我をしたら
あいつが高杉に傷つけられていたら
和泉が俺から離れていってしまったら…!
このドス黒い感情は高杉に向けられたもの
そしてこの淡い、糖分を食べた後に感じられる感情は……―――
「旦那!!早く行きやしょうっ!!!」
総一郎君の急かす声でハッっと現実に戻される
そうだ今は考えている場合じゃねぇ
ドタドタと廊下を走り
鉄子の心配そうな声を聞き流しながらブーツを履く
そして玄関のドアに手を掛けようとした、時だった
「ただいまー銀さーんジャンプ買ってきたよー
……ってアレ?どっか行くの?」
俺より先に戸を開けた人物は
もしかしてパチンコ?今日は当んないと思うから止めた方がいいと思うよー。とケラケラ笑う和泉
攫われたって俺、聞いたんだけどなぁー?と総一郎君を見れば「何で…!?」と呟き目を見開いている
あ、やっぱ攫われてたのかよ。
「あ、総悟怪我無い?てかゴメンねーお詫びになんか奢るからさ」
ね!とまた笑う和泉
その手には袋に入ったジャンプと【鬼桜】と書かれたビンが入っていて……
「はぁ……」
溜息つくしかねぇだろこのやろう……
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