chu×3-10



ボンゴレのお屋敷は広くて、迷子になるはずだったのに、無駄なくリボーンの部屋へ戻ってきた。理由は簡単、前を歩くのがそのリボーンだったから。でもリボーン…様子がおかしい。何、急に抱かれるがどうとか言い出してさ。強引に腕を引っ張られたかと思えばどこに座るでもなく、さらに奥へと続く扉をバン、と乱暴に叩いて開く。先にあるのは、寝室、なわけで。
(機嫌は良くはないよね…)
腕を振りほどくのさえ躊躇われた。怖い。そのまま私は、ここに来てから使わせてもらっているベッドの淵に座らされた。目の前に立つリボーンは、何か言いたげに私を見下ろす。その沈黙もなんとなく、痛かった。こんな状況になるって知っていたらリボーンの部屋に戻ろうなんて、言わなかった…のに…。


「……あ、の、」
「リラは何が目的で俺に拾われようとしたんだ」
「…え?」
「なあ、何でだ?別に俺は怒っちゃいねえよ。正直に言え」

自分の顎に彼の長い人差し指と中指が添えられてしまい、視線を逸らす事ができなくなってしまった。絶対に怒ってる、リボーン自身が理解していないのかそれとも、態と怒ってないと言いたいのか。


「目的なんて無いよ。だって、どうして此処にいるのか、自分でも解らないもの。確かにリボーンに会いたいって思った事は、ある。けど世界が違うんだよ、会えるとは思ってなかった」
「だから?」
「… 言ったでしょ」
「……そうか」


リボーンは一言だけ呟くと、私の腕と顎を掴んでいた手を放して何かを考え込んでいた。読心術なんて心得てないし、使えるようになりたいなんて今まで思った事が無かったからリボーンの表情を見たって心の中が読める…わけが、ない。けれど、目をちらりと見て感じた。リボーンは何かと葛藤しているみたいだった。ぐるぐると渦巻く闇がその問題を解決したくて光を求めていた。

暫くして、リボーンは私のすぐ隣に腰掛けて隙間を埋めるように詰め寄ってきた。(ふるり、と肩が震えた)右にいるリボーンの右腕が前を通り、私の左肩を捕らえた。そして、そのまま強引に後ろへと倒された。傍から見ればこれは押し倒されていると云っても間違いではない状態、で。リボーンは空いている左腕を立てて、やはり私を見下ろす。


「なに…?」
「どうしてリラは愛人という関係を嫌がる?」
「……」
「女は大抵、俺に近付けば媚びてくる。抱いてくれだのあれをプレゼントしろだの。俺はボンゴレのボスじゃねえ、だが限りなくツナと同等の位置にいるとは自負している。家庭教師だったからな。その俺の位置はボンゴレ夫人よりも手に入れやすい。トップとナンバー2の差はでかいんだ。そこを女は狙って近付いてくる」
「私は、そんなつもり…」
「ああわかってんだ!だから…わからねえんだよ…。お前、何すれば喜ぶんだ?」


肩に触れていた手が離れ、そのままその指先が私の前髪を払い、額を撫でて頬の辺りをなぞるように往復させる。その手付きは、少しだけ何かの欲を孕んでいるように思えた。リボーンは私に何と言ってほしいのだろう。それとも、この指先で私を欲情させたいのか。
そんなこと言われてもな…、私、さっぱり全くわからない。ただ困惑する事しかできない。


「…リボーンの視界に入る女性皆が、貴方の愛人じゃあないよ。ずっとそうやって生きてたの?」
「多分、違ぇ。普通に女の仲間はいたからな……。けどリラをそれに当てはめようとしても、全然、ダメだった。リラは俺をどうしたいんだ?俺に何を求めたいんだ?」
「そんな事聞かれても…、私はただ……っ、んん…!?ん…ぁ…ぁあ…あ」

唇に噛み付くような勢いでリボーンの唇と重ねられた。いきなりの事で呼吸ができなくて、思わず酸素を求め口を開いてしまった。手が宙を彷徨い、それをリボーンに絡め取られた。

「…はっ…ぁ…う…」
「鼻で呼吸しろよ、ったく…」
「え、リボ…ひ、…う…んんん」


そんなの普段ならやり方なんて聞かなくてもできるはずなのに、私の脳の中に鼻呼吸の行い方は綺麗さっぱり消えてしまっていた。結局リボーンに言われた事ができず、苦しくなってきた私は再び口を開いて酸素を取り込もうとした。すると、その隙を与えまいと言わんばかりにぬるりとした何かが私の口に入った。
(なに、これ…!?)
口腔をぐちゃぐちゃにするように暴れるそれは、私の思考までぐちゃぐちゃにしていった。決して不快に思わなかったのは、それがリボーンのものだというのを感じたからかもしれない。考え事なんてしてる余裕がなくなってきて、本気で酸欠になりそうで自然に涙が目尻に溜まる。


「どうだ…?他の男のなんかより気持ちいいだろ」
「…う、……ん…でも、こういうの初めて…だし」
「だろうな。いいか、普通俺が舌入れたらお前もそれに絡めるんだ」
「……ふつ、う…」


リボーンの言葉を聞き、反射的に私は首を振った。いやだ。どうしてリボーンは私を愛人と同じにしようとするんだろう。確かに私はリボーンの事好き、だけど、愛人になりたいわけじゃない。寧ろ同じ世界の中に入れる、それで十分だ。願わくばリボーンもまた私を想ってくれていますように、そう思った事はあったけど、こんなの、違う。


「…リラ、」
「い、いや…いや……離して、ねえ、」
「おい…っ」
「私 は、リボーンのためなら、頑張ろうって思った、けど、こんなの…!っ…ぅう…あ…」

私の言葉をとめるだけの口付けが降ってきた。涙を流してるのは私なのにリボーンの方が泣いているように見えた。

「骸の時は、嫌がらなかった癖に…」
「…あのときは」
「俺にも、求めろよ、抱いてくれって、なあ。リラがそうやって強請ってくれたら、俺は、」
「そ…いうの…やめてってば!!リボーン、やっぱり変よ!私、貴方の体が欲しいわけじゃない!今のリボーンは…ちょっとだけ、怖いよ…」


リボーンと会話するだけ辛くなる。私は何も考えずに部屋を飛び出してしまった。



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act.10
(拒まれたのは初めてだった)


自分の想像で書いている部分が多いので、間違っている箇所があるかもしれません。知識不足です、すみません。
20090910






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