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鮮血のRelease
突入




「…ありがとう。凄くおいしかった!」


ジェラートを食べ終わる頃には、私の意識はしっかりとしていた。


「それは良かった♪…ねぇ、夜はボンゴレを潰しに行こうか」

「!!」

「どうしたんだい?」


…そりゃボンゴレを早く潰したいよ。裏切った奴等なんてこの手でコワシタイ。…でも、ボンゴレを潰したら…白蘭がどっかに行っちゃうような気がして…。


「大丈夫。僕はずっと傍にいるよ」


まるで壊れ物を扱うように優しく抱き締めた。でもしっかりと私を抱いている。…心を読まれた感じがした。


「ずっと…?」

「ずっと」

「……信じ、ても…良いの…?」


一度は無くした信じる心。


「僕だけを信じて。僕は君を独りにはしないし絶対に君を裏切らない」

「びゃくら……」




「鎖チャン…愛してるよ」




キュッと抱き締めている腕に力が入る。嬉しいよ…。

"この人なら信じられる"

そう心から強く思った。


ぐぅ〜〜〜…

「あっ…」


安心したらお腹がなってしまった。恥ずかしい。さっきまでの空気がぶち壊しじゃんか。

白蘭は目を丸くさせるとすぐにフッと笑い出した。


「あははは!鎖チャンってお茶目だね♪…そっか、朝からジェラートしか食べてないもんね」

「う…うるさいっ」

「あはは!そんなに怒らないでよ。でも照れた顔もとってもチャーミングだね♪」


あぁ。なんでこの人は恥ずかしい事をペラペラ喋れるんだろう…。

火照った顔をパタパタと手で煽ると、今度は私のじゃない腹音が響いた。


「…白蘭?」

「うーん。僕もお腹空いちゃったみたい。そうだ!美味しいラーメン屋さんがあるんだ♪食べに行かない?」

「ラーメン?行く!」


こうして私は白蘭に連れられ、とてもおいしいラーメン屋さんに行った。


マシマロ、ジェラート、ラーメン、ギョウザ。

それに…信じる心。

今までに白蘭が教えてくれたもの。

これからも増えていくだろう。

二人で楽しい思い出いっぱいつくって


ずっと、ずっと。





でもその前に


「…準備が出来たようだね、鎖チャン」

「うん、白蘭。白蘭は?」

「もう少しなんだよなー。ねぇ、最初に泊まった真っ白な部屋、覚えてる?」


覚えてるよ、と返す。
つい最近の事だしね。


「そこで少し集中してから行きたいんだけど、着いて来てくれるかい?」

「もちろん!白蘭が居るなら!」


弱かった過去の自分は消さないと。


沢山のチェルベッロさんに見送られながら、アジトを後にする。少し離れた所にあの真っ白な部屋はあった。…やっぱり綺麗過ぎて私には居るのが辛い。


「…じゃあ今から集中するから、鎖チャンは離れててね♪」

「……うん。無理はしないでね…」


白蘭は「大丈夫だよ」と頭をポンポンと軽く叩く。
彼から少し離れた部屋の角。私が白蘭を見つめた数秒後には眩い光が渦巻いていた。

眩しすぎて目がチカチカする。

目を細めつつ白蘭の姿をしっかりと見る。あれは…何?

辛そうな白蘭の顔。それでも尚、集中を続ける。すると背中の辺りだろうか?ミシミシという軋むような音を立てて、羽らしき物が展開され始めた。

軋むような音から、パキリパキリと骨が折れた感じの音に変わる。最後に思いきりバキリと音が響いた時、完全に羽が空を仰いだ。

同時にふらつく白蘭。とっさに支える私の腕。


「…大丈夫!?」

「うん…ははは、やっぱり他の世界の僕から力をもらったから普段より楽に羽が出せたよ」


楽とはいえ既に軽く疲労している。普段がどれ程辛いのか、とてもとても想像出来ない。
…不謹慎だけど、ふいにこう思った。


「…凄く、真っ白できれい。天使みたい…」

「ありがとう鎖チャン。天使か…他の皆は悪魔だとか言うけどね」


こんなに綺麗なのに?


「容姿どうこうの話じゃないんだよ。本当はこの羽に沢山の血が染み込んでる。真っ白過ぎて見えないだけなんだよ」


その言葉は少し皮肉っぽく聞こえた。…それでも、綺麗だと私は思うよ。


「…じゃあ今からボンゴレアジトにワープするよ。手を出して♪」

「…うん!」


やっと…やっと復讐出来る…! スッと白蘭と手を繋ぐ。


「少し酔うかもしれないから気をつけてね。…鎖チャン」


首を少し傾げる。


「部屋に紅いのが欲しいって言った時、僕がグラジオラスを持って来たよね?」


コクリと首を縦に振る。


「花言葉わかる?」

「…ううん」

「"用心"って言うんだ。向こうに着いても油断しないでね。ちゃんと僕を頼って欲しい」






「もう君は、独りじゃないんだから」






「…ん…!うん…!」


溢れそうになる雫を精一杯耐える。


「…それじゃあ行こうか♪」


ギュッと目を瞑ると酷い耳鳴りと共に時空がグニャリと歪んだ気がした。

目をそっと開けると、目の前には建物が大きく聳え立っていた。…此処がボンゴレのアジト。


「この時代の彼(沢田綱吉)はやり手なんだ。超直感も大したもので多分僕達が来る事を想定して部下を配置してると思う。…入ったら銃弾の嵐。それでもついて来る?」

「何を今更…。何の為に白蘭について来たと思ってるの。それに銃弾の嵐なんて、昔は1週間に4回はあったよ」


共にくすくすと笑い合う。これから敵の本拠地に突入なんて思えないね。


「…せーの!」


ドアを思いきり破壊すると、現れたのは銃弾の嵐。あはは、白蘭の言った通りだ。

こんな所でもたもたしてる程私達は弱くない。
私が通った跡には切り刻まれた肉片。白蘭が通った跡には燃やされ肉片だったもの。


沢田綱吉達が居る部屋に辿り着いたのはそう遠くなかった。





2010/06/24

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