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鮮血のRelease
過去2




「ちょっと何あんた調子乗ってんの?」




ツナ君達と帰りの挨拶をした後、暫くして鞄に荷物を入れていると机にバン!と衝撃が走った。
…獄寺君と山本君の事が好きな子達だ。最近ずっと話してるから気に入らないんだろう。嫉妬なんて醜い。


「…なに?」

「獄寺君達とちょっと喋ってもらったからって調子乗ってんじゃねぇよ!!アンタなんかが相手にされんのは獄寺君達が可哀想だと思ってるからなんだからね!!」

そう思われてても、良いよ。元々独りだったから今更独りに戻るのは辛い。
ツナ君達にはどう思われてても良い。


偽善でもなんでも

普通で平凡な日常が

やっと手に入ったんだから。


「…なんと言われようと喋るのをやめるつもりはないし、ましてや離れるつもりもないよ」

「………」

「じゃあね」


鞄を持ちその場を離れようと席を立つと急に髪を引っ張られた。


「いた…っ!!」

「…ムカつく!アンタなんか居なくなればいいのに!!」


頬に平手打ち。流石にコレは堪えた。今までに身体的に攻撃された事はなかったから。


「…っ!!」


自然と涙が溢れる。その顔を見られたくなくてとっさにしゃがみこんで顔を隠した。


「ちょっ…今更泣いたって遅いんだからね!!」

「今まで何言われても泣かなかったのに…どうする?!」

「取り敢えず逃げ――…」


「何処に逃げるってんだ?あ?!」

「ひっ…!」


えっ?…この声は…。


「獄寺が忘れ物したっていうからついて来たら…お前等流石にやりすぎだぜ」

「白金さん大丈夫!?」

「…あ……」


来てくれた 来てくれた

嬉しい 嬉しい


「こ…これは違くて…そいつが…」

「ウゼェんだよ!!弱い者イジメして楽しいのか!?あ"ぁ"!!?…ったく胸糞わりぃー…」


獄寺君の砲口の中ツナ君が私の背中をさする。あたたかい…。


「でっ…でもでもでも!!こんな奴に付きまとわれて獄寺君達が迷惑してると思って…!!」

「白金は俺達のダチなんだ。他人が勝手に俺達の関係にどうこう言うのはやめてくれねぇか?」


押し黙るファンの子。
言い返してくれたのが嬉しくてさらに涙が溢れる。


「……?…おっおい!なんか鉄臭くねぇか?白金!怪我してんのか!!?」

「…してないよ?」


ゆっくりと顔をあげる。


「………え?!」

コポッ…


「白金…何だよ…その目…」

「……どうしたのな…?」

「うっ…うわああああああああああああああ!!!!」

「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


背中をさすってくれてたはずのツナ君が突然私を突き飛ばしバタバタとよろけながらも教室から出ていった。ファンの人達なんてもうとっくに居ない。


「待てよツナ!!」

「待って下さい十代目ぇ!!!」


獄寺君達が出ていったツナ君を追いかける。唖然と見ているとふいに獄寺君が不意に振り返り




「こっち見んな…化け物!!!」














それから何時間経っただろうか?気づくと夕方なんかとうに過ぎて冷たい風が吹き始めていた。


(「こっち見んな…化け物!!!」)


洋服にこびりついた血の涙を見つめる。はは…。今まで"化け物"なんて、言われ続けたのに。信じていた人に言われたら…そりゃ辛いよ。


あれから、どうやって家に帰ったのかわからない。お風呂に入ったは良いんだけど、とても食欲が湧くような状態ではなかった。

望んでいなくても朝は来る。学校に行かなければ親が迷惑する。億劫だけれども私は学校に行った。

当然、私を待ち受けていたのは今まで通りの陰口、無視、嫌がらせ。…信じていた者からの陰口、無視、嫌がらせ。後者の方は肉体的にも精神的にも堪えた。

自ら望んで

こうなった(紅い目になった)訳ではないのに

楽しい事と信じる事を覚えた私にとって、今までの仕打ちは今まで以上に辛かった。


そんな中3の冬

ついに私は初めての殺しをする


相手はあの日、私に平手打ちをした子。気が動転してて、よく覚えてないんだけどこれだけは言える。


気持ちがスッと軽くなったような気がした


それから私は各地を転々としながら殺しを続けた。…今考えてみれば "逃げ" だったのかもしれない。

そして暫くして私は

「鮮血の姫君」と裏の世界で呼ばれるようになった。

昔よりも強くなった今、沢田達に復讐すると決めた。だから私は探しながら、さらに年月を重ねて腕を磨いた。


そんなフリーの生活も突如終わりを迎える。
依頼主の任務を達成し、後始末をしようとしたその時、


「いやぁ、凄く強いね、君」


それが白蘭との出逢いだった――…




***


「ふーん…鎖チャンにそんな過去が…」


僕は何とも殴りたい気分になった。…自分自身を。
幸せそうに笑う笑顔の裏に、こんな過去があったなんて…。何も出来ない僕が恨めしいよ、鎖チャン…。

寝ている彼女の額に手を置くと、ゆっくりと撫でた。暫く撫でていると目蓋がピクリと動いた。起きるね。

***


「…う……白蘭?」

「良かったぁ。ちゃんと目を覚ましてくれたね。ほらもう少しで美味しいの食べれるよ」

「…私、なんで部屋に…」


確か、苺のジェラートを食べて…。


「あぁ、久しぶりに昼の外に出たからね。陽射しで倒れちゃったんだよ」

「…そっかぁ…ごめんね?折角散歩に誘ってくれたのに」

「気にしなくて良いよ♪」


白蘭が喋ってから数秒後、部屋にチェルベッロさんがやってきた。


ピンク色のジェラートを持って。




2010/06/20

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