鮮血のRelease
出逢い
「そんなんじゃ…切れないよ?」
イタリアの首都から少し外れた裏道。暗闇に澄んだ声と何かが擦りきれる音が響いた。キリリ、キリリと締め付けている。
「こ、れが…噂の鮮血の姫君…!」
「そーよ、姿が見れたんだから…もう良いよね?」
「まっ…!」
スパァンと勢いよく血飛沫が鮮血の姫君と呼ばれた者に降りかかる。
「冥土の土産にはなったでしょ?」
指についた血をペロリと舐め上げると、自前の紅い瞳がより一層美しく輝いた。
「いやぁ、凄く強いね、君」
「…だれ?」
突如背後から響く声にキッと身構える。すると「まぁそんなに身構えないでよ」と明るい声が返ってきた。
「君、今はフリーの殺し屋らしいね。その力でフリーなんて、勿体無いなぁ」
さっさと用件を言わない白髪の男にイライラする。ピンッと張った自分しか視認出来ない凶器を奴の周りに張り巡らせた。…筈だった。
「やっぱり君の武器はワイヤーかー。どおりで切り刻まれた身体の切口は一定で綺麗だったんだね」
まさに呆気にとられた。だって今まで私のワイヤーを視認出来た奴は居なかったし…切る、なんて…。
「ねぇ、僕のファミリーに入らない?」
自然と地面を見つめていた私の視界に、なんの汚れもない右手が差し出された。私みたいに血がこびりついていない、右手が。
「…喜んで」
戦う前に負けが確定している相手に刃向かう程愚かじゃないよ。
……いや、負けが確定しているから仲間になるんじゃなくて、ただ単にこの白髪の男に興味が沸いてしまっただけのこと。
"この人は私の復讐に付き合ってくれるかもしれない"
そんな期待を頭に浮かべながら、薄暗い裏道を歩いていった。
2010/04/27
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