可愛いお嫁さん(アルミラ)
(現パロ:夫婦)
「アルヴィン、」
「ダメ」
「…まだ何も言っていないだろう」
日曜の昼間。
テレビではニュースキャスターが何やら事件を読み上げている。ああ最近はこんなニュースばっかで嫌になるね気が滅入っちまうよ。なんてぼんやりと画面を見ていたら、不意に塞がれる視界。テレビの前に立つと見えないでしょ、なんて言いつつ嫁さんを移動させようとする。すると目の前でバサリとチラシが広げられた。…あのな。
「だから見えないって。ミラ様」
「…」
「んなぶーたれてもダメ」
普段人前で拗ねて頬を膨らませるなんてことはしないもんだから、そのあまりの可愛さに緩みそうになる口元にグッと力を入れる。旦那相手にしか見せないんだよこれ、なんて優越感に浸りつつ、さっとチラシを取り上げた。
「あ、」
「今日は夕飯ジュード達と食いに行く約束だろ」
「…」
「こないだアイスキャンディ食い過ぎて腹壊して行けなかっただろ?」
「…食べ過ぎただけだ」
「買うと一箱食おうとしちゃうよな」
「……」
…益々膨れた。何コレ可愛い。
アイスキャンディねだって拗ねる嫁さんってなんだそれ可愛い。ポーカーフェイスを気取って内心愛しさで溢れかえっている。こんな心の中を誰かに見られでもしたら、恥ずかしくて死ねると思う。行き付けのスーパーの特売日は日曜日。だいたいこの日にミラはチラシを持って何かしらおねだりしてくるのだ。今日はアイスキャンディが食べたいらしいが、放っておくと一箱食べてしまいかねないのだ。さらにはこの後予定もある。それに響いては困るじゃないか。…とはいえそこまで鬼にはなれず、ちらりとアルヴィンは冷蔵庫の方に目をやる。
「あー、そういや冷蔵庫にシュークリームあったんだったわ」
「!」
「…食う?」
「くれ!」
「へーへー」
ついには堪え切れずに噴き出すと、冷蔵庫からとっておきのシュークリームを取り出した。昨日の仕事帰り、こっそりと並んで買ったものだ。喜んで貰えて良かった。美味しそうに頬張る妻を見て、心底そう思う。
「あ、ミラ様クリーム」
「ん、どこだ?」
「…ここ」
シュークリームに夢中なミラの唇に口付けを一つ。甘いな、なんて囁けば、食べたいのならそう言えばいいだろうなんて色気もない返事が返ってきて思わず脱力してしまう。
「ミラ様ってばムードな〜い」
「?」
きょとんとしているミラに笑って、額にも口付けた。まあでも、そんなところも可愛くて好きだけど。
「ほんと、おたくと居ると飽きないわ」
「ふふ、それは何よりだな」
ふわりと笑みを向けられたものだから、頭をクシャクシャと撫でて思い切り抱き締めた。あーもう。幸せ過ぎておかしくなりそうだなあ。
そんなある日の午後。
(アイスは我慢してくれな)
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アルヴィンを幸せでどろどろに溶かしたい。
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