気付かないでね(ルク→ティア) (ルーク独白) 初めて会った時のアイツの印象は、どんなだっただろう。あの頃の俺は世間知らずな奴で、自分勝手で。本当にダメな奴だった(今だってダメな部分は変わったかと言われれば、俺は首を横に振るけれど)。おっと話が逸れた。ティアへの最初の印象は、『冷血女』だった。 師匠を襲おうとしたアイツと一緒に、屋敷の外に飛ばされて…。嗚呼、昨日のことみたいにハッキリ思い出せる。そこからモンスターを倒して進んで、辻馬車に乗って… とにかく、屋敷を飛び出してからは色々なことがあった。知らないことだらけで、焦ったりもした。取り返しがつかないようなことも……した。 次にヴァン師匠と戦う時が、最後の戦いになる。そして決着がついた時。きっと、俺は消えてしまう。…いや、きっとじゃない。何となくだけど、これは確信してる。……跡形もなく、消えるんだ。 大分気持ちの整理がついたとはいえ、やっぱり死ぬのは恐い。本当はもっと皆と、ティアと一緒に生きていたい。身体も震えるし、足だってすくむ。 でも、それでもヴァン師匠を放っておくことなんか出来ない。俺が消えるより、みんなが居なくなるほうが恐いんだ。だからもう振り向かない。絶対に、師匠を倒してみせる。 ──ああ、でも。 心残りがないって言ったら、嘘になるなあ。普段恥ずかしくて気付かない振りしてたけど、ふと気付けばティアのことばっか考えてる。確かに最初は『冷血女』だなんて酷いことを言ったりした。でも、違うんだ。普段は真面目で厳しい印象だけど、本当は優しいし脆いところもあるんだって知ったから。辛いのに無理したり、一人で抱え込んじまう奴だったんだ。だから出来るだけ護ってやりたいって、思えるようになった。それももう無理…なんだけどさ。 きっと俺は、ティアのこと…。 ……でもこの気持ちは言えない。 言っちゃいけない。だって俺はもうすぐ消えるから。それなのに気持ちを伝えたりしたら、きっと負担になる。だからこの気持ちは、胸の中にだけ留めておくんだ。 自分勝手だと思う。 でももう少しだけ。その時まではティアのこと、好きでいさせて欲しいんだ。 いつまでも伝わらないままでいてください (言えないけど、好きだよ) (反転コンタクト様) |