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子供扱いすんな(ゼロスとクラトス)
※ネガティブゼロス
※家族愛みたいな感じ




ロイド達と行動を共にし始めた赤髪の神子との、何度目かの情報交換の時。

その日はいつになく、不安定だったのだろうか。何を思ったのか、ゼロスはクラトスの姿を目に移すなりその口を開いた。



「俺さまの人生の最期、どうなるか天使サマ知ってる?」

「……話が見えんな」

「‥すっとぼけんなよ。知ってるクセに」



そう言って赤い髪の青年は、さも面白い世間話をするかのようにカラカラ笑った。上辺だけの笑い。そう感じてもクラトスは、何もすることは無かった。否、何をするにも諦めている。所詮自分はユグドラシルの命を受け、接触を重ねているだけなのだから。自分で考え人に何かをする方法など、とうの昔に捨ててしまった。



……と。
そう思っていた。少し前までのクラトスなら。

しかし今は、死に別れたと思っていた息子と出会い。傍らで彼を見守るうち、何があっても諦めないということ、自らが行動を起こさない限り何も変えられないことを逆に息子に教えられた。



「人生って名前が付いてるだけの、何もかもがんじがらめな一生。俺は用意されたレールをただ走ってるだけ」

「……」

「…最期の最期までんな人生…まっぴらごめんなんだよ」



絞りだすように呟いて俯くと、赤い髪で青年の顔が隠れてしまった。誰もが求めるのは『神子』であって『ゼロス』ではない。どうせ目の前の鳶色の天使も、その息子と仲間たちも。


そんな空っぽの人生に、一体何の意味がある?


仮に最期まで神子を貫いたとして。
その先に待っているのは次の神子を好きでもない奴に生ませて、愛情もなく育てている自分。それでは自分自身の親と何の変わりも無かった。


…クルシスの思い通りになど、絶対にさせない。せめて最期ぐらいは、自分自身で決める。



ゼロスから、言葉は発せられなかった。しかしクラトスは、確かにそんな青年の悲痛な心の声を聞いた気がした。



ぽすん。
そんな軽い音を立てて、何かがゼロスの頭に乗る。驚いて見上げると、今まで見たことがないくらい柔らかな表情を浮かべた鳶色。そして、頭に乗ったそれはクラトスの手のひらで。




「ゼロス」




初めて、『神子』ではなく名前で呼ばれた気がした。




「まだ、結論は出すな」

「…は」

「お前はまだ、知らぬこともあるだろう」

「…何、言って…」



そう。
そのうち気付けば良い。
すぐ近くにある日だまりは、ゼロスにも分け隔てなく降り注ぐことを。


かつて全てを諦めていた自分が、心を溶かされたように。




「もう暫く、あれと行動を共にすればいずれ分かるだろう」

「……今更、」




人を信じろってのかよ。
そう言おうとしたゼロスの頭を少し乱暴に撫で、無理矢理続きを遮った。




「ロイドは、そう簡単に手放したりはしない」





何を、とは聞けなかった。
何か言おうとすれば、少しでも気を抜けば。涙が零れてしまいそうで。




五十歩百歩
(そこまで変わりはしない。私も、お前も)




(…それより何なのよ、この手)
(お前が子供だからだ)
(……答えになってないんですけどー)
(…フッ)


あきゅろす。
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