助かりました(ゼロしい) (ゼロしい祭!) 仲間達が寝静まった深夜。 何か不安だったのだろうか。寝付く事が出来ず、一人目が冴えてしまっていたゼロスは、音もたてずにひっそりと宿を抜け出した。同じ部屋のロイド達は眠ったままだ。全く、随分とお気楽な事で。仲間内にまた裏切るかもしれない危険人物を入れておきながら。安心して熟睡するだなんて、本当に。 (―――はあ、しんど) 彼らが信じてくれているのは知っている。信頼されることに慣れていないから罰が悪く感じてしまうが、それは本来とても心地よいもので。ロイド達に協力するのは決めている。自分らしくはないが、進むのは認め向き合う道。覚悟は、出来ている。…それでも。 ―――それでも。 罪悪感を感じない程に性悪ではないつもりだ。散々裏切り行為を影で行ってきた自分を許し、受け入れてくれた仲間達。嬉しく思うのと同時に、辛くなってしまうのだ。気の良い奴らだからこそ、余計に。いつになく暗い気持ちに覆われてしまったゼロスは、一人溜め息をつく。全く持って、らしくないじゃないか。そう頭の片隅でごちた時だった。 「こんなところで何やってるのサ」 「…っ、」 急に背後から声を掛けられた。 気配もなく突然知った声がしたものだから、驚いて情けない声を出してしまった。そんなに上の空だったのだろうか。いつもならば気付かないなんてことはないのに…悔しい。だが相手は隠密が得意分野のミズホの民だ。こればかりは、仕方のないことなのかもしれないけれど。 ゆっくりと振り返れば、月灯りに照らされて少女の顔が見えた。その顔を見るだけで、暗い闇に覆われた心が少し明るさを取り戻してしまう。我ながら、現金なものだ。ついつい苦笑いを浮かべて、ミズホの少女の名前を呼んだ。ちょっぴり複雑そうな顔をして、しいなは此方に近付いて来る。 「‥しいな」 「眠れないのかい?」 「ま、そんなとこだな。…しいなってばもしかして、俺さまが心配で様子見に来たとか〜?」 「ばっ、馬鹿な事言うんじゃないよ!目が覚めたからちょっと散歩してたらたまたまアンタが、」 「サンキュ」 「なっ、」 「それでも助かったわ。サンキューな」 「〜〜〜っ!」 いつも通り笑えているかは分からないけれど、ゆっくりと笑みを浮かべながら感謝の意を述べる。するとしいなは一瞬ポカンとしたあと、眉間に皺を寄せて顔を赤くしてしまった。どうやら図星だったようだ。可愛い奴だなとぼんやり思いながら、込み上げてくる笑いは我慢出来ずについつい噴き出してしまう。 「でっひゃひゃ、茹でダコ〜」 「ゼ〜ロ〜ス〜〜!」 「あだっ、いきなり殴るなよアホしいな!」 「アホにアホなんて言われたかないよアホ神子!」 「ひっでー言われようだな、でひゃひゃひゃひゃ!」 馬鹿みたいなやり取りに、救われている自分が居る。こんなやり取りをするのが好きな自分は、まあ確かにアホなのかもしれない。麗しの神子様に、アホだなんて言うのはしいなを含む仲間達だけだろう。それも妙に心地よさを感じてしまうのは、仕方のないことか。笑い過ぎて涙すら出て来る。それを指で拭いながら、先程よりいくらか明るい表情で、ゼロスはしいなと向かい合う。腹部が痛くなる程笑ったら、ちょっとだけ気持ちがスッキリした。 「‥しいなマジ天才」 「馬鹿にしてるだろ」 「してねーよ、マジマジ」 「…」 不服そうな顔をしているしいなの肩を軽く叩いてマジだって、と続ける。心配をされるのは、こんなにも温かいことなのか。いや、コイツだから俺は―――其処まで考えて、ゼロスは口元に笑みを浮かべる。全く持って、適わない。こんな弱いところを見られてしまったら、もう強がることは無意味じゃないか。いつから弱い部分をしいなに知られても、平気になったのだろう。 「…今日俺さまが此処に居たこと、他の奴には言うなよ?無駄に心配掛けるだけだしな」 「ったく、仕方ないね…」 「2人だけの秘密、な?」 「‥アホ」 そういいながらも、口調は柔らかいもので。本当に、優しいな。落ちている時にそんなことをされたら、余計に惹かれてしまうと分かっててやってるのだろうか。天然ならば天然で末恐ろしいものがある。少し熱を持った頬に気付かないフリをして、そっと目を閉じる。 (コイツに見付けて貰えて、良かった) 君しか知らない (見付けてくれて、ありがとう) (サンキュー、しいな) (…調子が狂うから早く…元気出しな) (ハニーやっさし〜) (ちょ、調子に乗るんじゃないよ!) ゼロしいへの3つの恋のお題:君しか知らない/君の世界を俺だけにして/もう一度、もう二度と、君を離したりしない http://shindanmaker.com/125562 ------- ゼロしいよ永遠なれ!← |