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◆我慢してたのに酷いな(アスパス)




ラントの屋敷の客室。
部屋に備え付けられた真っ白なカーテンが、開けられた窓から入る風でゆらゆらと揺れる。気持ち良い風が吹いているなあと、パスカルは笑った。流石は大翠緑石(グローアンディ)のある国、ウィンドルだ。

久しぶりにウィンドルに来たのだからと、ラントにも足を運んだ彼女。ちょっとした長旅で疲れただろうと、領主でかつての仲間であるアスベルが泊まっていってくれと言ってくれた為、せっかくなのでその言葉に甘えることにしたのだ。アスベルは勿論ソフィとも色々話したいし、泊まり掛けとあれば時間はたっぷり取れる。仲間の家に泊まるだなんて、考えるだけで楽しい。色々と都合が良いのも確かだった。



…のだが。



「あのな、パスカル。いくらなんでもそのままじゃ風邪引くぞ」

「面倒くさいよー」

「はあ…シェリアの気持ちが痛い程分かるな…ってこら!そのままベッドにダイブするな!」



無理矢理風呂に入らせられたのと、ソフィは本日はバロニアへの使いに行っていて留守だったというのは予想外だった。まあソフィは仕方ないにしても、入浴はあと2日ぐらいは平気だったのにと妙齢の女性らしからぬ理由でぶーぶーと頬を膨らませる。アスベルはそんなパスカルに苦笑しながら、バスタオルで髪をワシャワシャと拭いている。一応はアスベルのほうが4歳ほど年下なのだが…これではどちらが上なのか分からない。まあパスカル本人は、そんな事は全く気にしないのだが。



「まだ平気だったのにー」

「まだってなんだ、まだって」

「シェリアみたいなこと言うなあ、アスベルは」

「いや、誰でもそうだと思うぞ。世間一般的に」

「ぶーぶー」

「ほら、あとは自分で」



そのままアスベルがやってよーと言えば、仕方ないなとため息をつきながらもワシャワシャと続けてくれる。優しい。更に兄弟揃ってお世話焼きなんだなあ、とついつい口元が緩んでしまった。急にニヤニヤしたのが気になったのか、アスベルが顔を覗き込んでくる。



「パスカル?」

「ふへへ、似てるよねやっぱり」

「?」



似てるって言ったら弟くんしかないじゃん、そう続けながらパスカルは不意にアスベルからタオルを奪う。拭けないだろ、パスカルと反論の声が上がったが、そんな事は気にしない気にしない。バサリとアスベルの頭にタオルを掛けて、そこに自分も入り込んだ。



「っ、何するんだパスカ…」



至近距離に、困惑を浮かべるアスベルの青と紫の瞳。キラキラしていてとても綺麗だ。悪戯が成功したようににやりと笑うと、そのまま唇を塞いだ。ゆっくり離れると一瞬だけ惚けた顔をして、そのあと直ぐにサッと頬が赤くなる。不満そうに眉を寄せているその様子に、更にパスカルは笑った。



「ソフィが居なくてつまんないから、アスベル構ってよ」

「…あのな、」

「あははっ、アスベルの唇奪っちゃったー」

「……はあ」



呆れたようにため息をついて。
あまり煽るなよ、パスカル。そのまま余裕無さげにベッドに縫い付けられた。やられてばかりでは悔しいと、そう顔に書いてある。これだから年下の男の子は面白い。つい先程まで、キャミソールと短パンという薄着の女の子の髪を拭いていたにも関わらず、平気そうにしていたというのに。いや、煽ったつもりはパスカル本人には無かったのだが。



「あのな。これでも結構我慢してたほうなんだぞ」

「ありゃ、声出てた?」

「わざとらしいな」



柔らかい笑顔を浮かべたアスベルの瞳に見え隠れする熱に気付くと、漸くパスカルの頬が染まった。どうやら冗談ではないらしい。捕まった腕を何とかしてみようとするが、当たり前だが動くことはなく。そのうち抵抗自体が面倒くさくなって力を抜いてしまう。まるでまな板の上の鯉だが、そういった行為が嫌いという訳じゃない。



「ベッド濡れるよ?」

「今更だろ」

「そうだね」

「もし風邪を引いたら、俺が看病してやるよ」

「うひょー、それはいいかも」

「おいおい」




なんて色気のない会話をしつつも、ちゃっかり唇は寄せてくるのだから。アスベルって可愛いなあと手を握り返しながらパスカルは思うのだった。




真昼だって構わない
(いいだろ、好きなんだから)



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深夜のテンションで書くと大人風味になるね…(真顔)


アスパスへの3つの恋のお題:甘えるってどうすればいい?/真昼だって構わない/今ここで抱きしめたい http://shindanmaker.com/125562


あきゅろす。
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