きっと一生好き(ヒュパス)
自分で言うのもなんだけれど。
我が家の妻は、とても可愛らしいと思う。もう何年も一緒に居るが、未だにどんどん好きになっていくのだ。まるで底無し沼のようだと、ため息をつく。自分は一体、何処まで落ちてゆくのだろうか。
忍耐力は人一倍あると、ヒューバートは自負している。ごく一般的な人間が、パスカルという常に予想の斜め上をいく人物と結婚まで辿り着けるものか。その点に関しても、誰にも負けるつもりはない。恋とは不思議なもので、出会った当初は絶対自分とは合わないし理解し合えないとすら思っていたのに、今ではどうだ。大分彼女のことを理解することが出来るし(これは一重にヒューバートの努力の賜物である)、世話が焼けるパスカルの世話を焼くこと自体が、楽しいだなんて思ってしまっている。ヒューバートにとって唯一の誤算は、とことんまでパスカルに首ったけになってしまったことか。最早開き直るしかないぐらいに、溺愛してしまっている。必死にポーカーフェイスを気取っていてもダメなのだ。オーラ的なものが出てしまっていると、かつての仲間であるマリクは言っていた。筒抜けだなんて、恥ずかしいにも程があるが、無意識に垂れ流してしまっているのだから、仕方がないのかもしれない。
「パスカルさん、起きてください」
「ん〜…」
眠たそうに目を擦りながら、寝起き特有のとろんとした目でこちらを見る。寝癖のついた髪の毛。ヒューくんおはよう、と舌足らずな声。ほら、どこをとっても愛しい。なんだこの愛らしい生き物は。僕の妻だ。なんてくだらない自問自答をして。今だに目をショボショボさせる妻に、柔らかく笑みを浮かべた。
「おはようございます」
「…ヒューくん、」
「はい」
「今日、休みだっけ」
「ええ。そうで……うわっ!」
言葉の途中でむぎゅう、と抱き付かれた。そのまま引っ張られて、ベッドにダイブしてしまう。ああ、せっかく出掛ける支度をしたのに。久しぶりの休日である今日は、夫婦揃って何処か出掛けようと、前々から色々と考えていたのだが。むぎゅう、と此方を抱き締めて胸に顔をすり寄せてくる妻が可愛過ぎる。とてもじゃないが、手を離せない…ってダメだダメだ此処で負けては。
「パスカルさん。今日は…」
「もうちょっとだけ寝ようよ。ヒューくん、疲れてるじゃん」
「パ…」
「だめ?」
ダメな訳ないじゃないですか!と勢いよく言いそうになった。危ない。そんな至近距離からの上目遣いは反則である。そう考えてしまった時点で、ヒューバートの負けは確定してしまった。仕方がないですね、と緩く笑う。
「あと少しだけですよ?」
「うん…」
此方もぎゅっとパスカルを抱き締めると、彼女の頭に顎を乗せる形で包み込み、ゆっくりと目を閉じた。トクトクと穏やかに刻む鼓動を感じながら、やはり勝てなかったと内心苦笑い。でもそれで構わないのだ。惚れたもの負け。負けでもいい。だから今、こうして幸せな体温を感じているのだから。
額に触れるだけのキスを贈ると、くすぐったいよと幸せそうに笑われた。こんなに幸せで良いのだろうか。ヒューバートはクスクスと笑いながら、もう一つ口付けを贈る。
ずっと、一生。
きっと自分はパスカルに恋をし続ける。だがもうそれで構わない。妻もそうだったらいいと、ヒューバートはパスカルの唇にそっと触れるのだった。
百年の恋って言うけれど
(僕も例外じゃなく、彼女に一生恋をする)
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ヒュパスへの3つの恋のお題:君が望むなら何度でも/ただ傍に居てくれたらそれだけで良かった/百年の恋って言うけれど http://shindanmaker.com/125562
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