キスしていい?(ジュレイ) (…あ、まただ) 互いの唇が触れ合いそうになる時、これ以上ないぐらい顔を赤くして、恥ずかしそうにギュッと目を瞑る幼なじみで恋人な彼女の仕草が、とても可愛いなと思う。 我ながら、レイアに関してはなんて余裕がないんだろうと苦笑する。獣のようにがっつく男子なんて、格好悪過ぎる。まるでアルヴィンみたいじゃないかと、若干失礼なことを考えてみたりして。彼女にはそう思われたくないとは思うのに。 なよなよしてる、とか。 男らしくない、とか。 全く嬉しくないその他諸々を言われても、やはり此方も健全な思春期男子なのであって。色々と考えを巡らせてしまうのは自然の摂理というか、仕方ない訳ではあるが。これはどうなのだろうか、とジュードは思う。こう、頻繁にキスがしたくなってしまうのは。これもまた自然の摂理か?否、やはり自分が辛抱強くないからか… 「自然の摂理じゃね?」 「あ、アルヴィン…!?」 「うんうん唸ってるから何かと思えばそんなことかよ。んなもん気にするまでもねーじゃん」 「……声、出てたんだ」 「ん。悪ィ、聞いちまった」 横から唐突に声を掛けられたものだから、肩をびくつかせてしまった。ニヤニヤと居心地の悪い笑みを浮かべて、あまり申し訳なく思ってない…寧ろからかいの色を帯びたその声に、ジュードは頭を抱える。聞かれたことがあまりにも思春期真っ盛り過ぎて、恥ずかしさのあまり顔から火が出そうである。いや今のはアルヴィンは悪くない。悪くないんだけどさ! 「悩む必要なんてねェじゃん。レイアとは恋人同士だし?我慢は良くねェぞ、優等生」 「そ、そうかもしれないけど…」 「何が問題な訳?」 此方の気も知らないで、胡散臭そうな笑みを浮かべたまま事も無げにそう言ってくる。無駄に汚れた恋愛ばっかりしてそうなアルヴィンには分からない問題に違いないと、またジュードは失礼なことを思いつつも諦めたようにため息をついた。もう聞かれてしまっているのだから、隠したって無意味なのだ。ならばいっそ吐き出してしまえばいい。 「…怖いんだよ」 「怖い?」 「どこかに、行っちゃいそうで」 レイアと目を合わせて。 その綺麗な翡翠の瞳に吸い寄せられるように唇を合わせたら、最後。何も分からなくなってしまう。歯止めが効かなくなって、どこか分からない深い場所に何処までも落ちていってしまいそうで。抜け出せなくなってしまいそうで。 「ふーん、溺れそうで怖いってか。俺には惚気にしか聞こえねーけど」 「あのね。僕、結構真剣に悩んでるんだけど」 「…ま、アレだ。じゃあ落ちるだけ落ちてみたら?」 「え、」 大切にしたいってのも恋愛かもだけど、それだけじゃねェんだからさ。アルヴィンはそれだけ言うと、ジュードの頭にポスリと手を置いてから向こう側に行ってしまった。 (落ちるだけ落ちて、みる…) その発想は無かったと、ジュードはこめかみに手を当てる。その言葉がすとんと胸に落ちた。怖がらずに落ちるところまで落ちたら、確かにもう大丈夫な気がする。つまりは流れに任せろ、ということ。逆らおうとするから、恐怖を感じるのだ。 「あれっ、どうしたの?こんなところに一人で」 「レイア、」 「ん?」 こちらを覗き込むのは幼なじみ。ゆらゆらと、翡翠色の瞳が揺れる。其処に映りこんだ自分が、実に情けない表情に見えた。そもそも何故、キスがしたくなるのだろう。そんなことは簡単だ。レイアが、好きだから。だから僕は、僕は――― 「ジュード?」 「レイア、」 ゆっくりと頬に手を添えれば、さっと赤く色付く。それが堪らなく可愛くて愛しい。こんなにも自分はレイアに溺れそうになっている。馬鹿馬鹿しいぐらいに。好きで好きで、離せなくなるぐらいに。好きで、好きで、どうにかなってしまいそうだ。いっそのこと、レイアも溺れてしまえばいいのにと思う。周りなど分からなくなる程に。互いにそうなってしまえば、もう恐怖など感じないだろう。二人一緒ならば、きっと。 「レイア。好きだよ」 「ジュー、ド…」 キスしていい? そう意地悪な質問をすれば、返答の代わりに恥ずかしそうに目を閉じた。やっぱり少し格好悪いなあと笑って、その唇を塞ぐ。それもこれも、レイアが可愛過ぎるからいけないんだよ、なんて自分勝手なことを考えながら。 (やっぱり可愛い) キスしたい、キスしたい、キスしたい (とても言葉じゃ足りないよ、) (もう。可愛いんだから、レイアは) (ふふ、何それ) (どうにかなりそう) (…!) ------ 思春期ジュードくん。 アルヴィンが不憫なのはデフォルトです← ジュレイへの3つの恋のお題:目隠ししようか/キスしたい、キスしたい、キスしたい/鳴らない電話 http://shindanmaker.com/125562 |