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ねえ、お願いだよ。(アルレイ(→)←ジュ)



どうして。
いつの間にこうなってしまったのだろう。実際はそんなことある筈がないのに、レイアはずっと傍で当たり前のように見守ってくれるのだろうと思っていたから。




「ジュード、元気だった?」

「うん。レイアも元気そうだね」
「ふっふっふ、私は元気が取り柄ですからね」



かなり久しぶりに幼なじみであるレイアに会った。互いに仕事が忙しくて、連絡は取り合っていたが、中々時間が合わなかったからだ。漸く空いた時間に喫茶店で待ち合わせをして、向かい合わせに席に着く。幼い頃からずっと知っている相手だった筈なのに、暫く会わなかったというだけで、こんなにも懐かしくて擽ったく感じてしまう。あの頃よりも幾らか長くなった髪を束ねて帽子を被っているレイアは、実はまだあまり見慣れない。そう思いながらもジュードは目の前に座りココアフロートのアイスをつつくレイアを、眩しいものを見るかのように目を細めて見つめた。離れていたのだから当たり前なのに、『見慣れないレイア』が其処にいる。その事に対して、胸の辺りにポッカリと空いた穴。自分はそれを寂しいと感じているらしい。近くに居た彼女がどんどん遠くに行ってしまうと思っていたが、それでも何故か。此方が求めれば当然のように、傍に居てくれるのだと思っていたのに。



「なに?もしかして私の顔になんか付いてる?」

「‥ん。何でもないよ」

「ふふ。久しぶりに会ったのに、相変わらず変なジュードだね」

「ちょっと、それどういう意味?」

「あはは〜、冗談冗談!会えて嬉しいよ、ジュード!」



明るい笑顔を浮かべる幼なじみに何故か照れてしまったのは、一瞬だけ知らない女の子に見えてしまったからか(レイア相手に照れるだなんて、今まで無かったから)。暫く会わなかったことを感じさせない、ごく自然な会話。これも幼なじみの特権だろう。容姿は違えど、いつ話をしても変わらないレイアと自分。その事に、何処かホッとしている。



そのまま互いに近況を話しているうちに、レイアが急に何かを思い出したかのように手を叩いた。どうしたのかと目の前の幼なじみを見つめる。ほんのりと頬を染めるその様子に、何故だろう、とても嫌な予感がするとジュードは少しだけ眉を潜めた。



「あ、ねえ…ジュード」

「どうしたの?」

「んー…こういうのって、報告した方が良いのか分からないんだけど…」

「何?急に改まって…言い掛けたならちゃんと言ってよ。僕とレイアの仲じゃない」

「あー、うん…」



あのね。
私アルヴィンと、お付き合いすることになったんだ。



そう目の前で続けられた言葉に、珈琲を飲もうとカップを傾けた手が止まった。いや、一瞬呼吸すら止まってしまった。やはり嫌な予感は当たってしまっていたのだ。心なしか、カップを持つ手が震えている。なんだ、それは。いつの間にアルヴィンとそんなことになって…。ぐるんぐるんと思考を巡らせていると、レイアが心配そうに此方を覗き込んだ。これはマズいと、急いで取り繕おう(相手が相手なだけに、通用しないかもだが)



「ジュード大丈夫?凄い顔してるけど、そんなに珈琲苦い?」

「え、あ、うん…大丈夫だよ。その…驚いただけだから」

「あはは、そりゃ驚くか〜。なんせあのアルヴィンだもんね、お相手」

「いや、確かにそれもあるけど…そもそもレイアと付き合う人が居るなんて思わなかったから」

「ジュード、それすっごい失礼」


むすりと頬を膨らませる幼なじみに苦笑いを浮かべる。流石に、僕ぐらいしか居ないんじゃないか、とは言えなかった。レイアが、自分の傍を離れて誰かの傍で生きていくだなんて、思いもしなかった。そんなこと、彼女を選ばない限りは不可能なことだったのに。いつの間にこんなにレイアが心の中にいたんだろう。チクリと痛む胸に少しだけ泣きそうになりつつ、ジュードは言葉を続ける。



「ごめん、冗談だよ。レイアはガサツそうに見えて優しいところがあるし、人気者だと思うよ」

「それ、絶対褒めてない」

「でも、本当のことだろ?」

「そりゃあ……確かにそうかもだけど…でもそれ、絶対女の子に言う台詞じゃない」



完全にむくれてしまった。
此方が少し、言い過ぎてしまったみたいだとは分かっていたので、ずっと言えなかった言葉を口にしてみることにする。今を逃したら、もう二度と言えなくなる言葉を。




「褒めてるよ、ちゃんと。レイアは可愛いよ」




ずっと思っていたこと。
でも伝えていなかった。
口に出す恥ずかしさもあったが出来るだけ優しく素直にそう言えば、不意にレイアは泣きそうな顔をして俯いてしまう。




(泣かないで、レイア)




咄嗟に慰めなくてはと手を伸ばしたが、グッと堪えて届く寸前で止めた。レイアを慰めるのは、僕じゃない。僕の役目じゃ、ないんだ。



「……今更…そんなこと、言うんだ…」

「‥え?」

「何でも、ないよ。ありがとうジュード。私、きっと幸せになるから」



次に顔を上げた時のレイアは、いつもの明るい笑顔だった。それに安心しつつも、どうして泣きそうな顔をしたのかが気になったが、きっと教えてはくれないだろうと無理に問い質すことはしなかった。



「アルヴィンなら、きっと大丈夫だよ」

「そーだよねっ。ジュードの100倍優しいし!」

「ひゃ、100倍って…」




僕の知らないレイアを、アルヴィンはこれから知っていくのだろうか。想像するだけでモヤモヤが広がっていく。もっと早くずっと一緒に居て欲しいと伝えられたのなら、こんな悔しい思いはしなくて済んだのに。そんな風に後悔しても、もう何もかも遅いけれど。




(いつも失ってから気付くんだから)





「幸せになって、レイア」




(お願いだよ)



自分に出来ることは幸せを祈ることしかない。だから精一杯の気持ちを込めて、柔らかく笑みを浮かべた。




きっと大丈夫だよ
(大好きな君なら、きっと)




(アルヴィン?僕だけど)
(おう、珍しいな。どうし)
(レイアのこと泣かせたら許さないから。それだけ)
(…へー、お前さんがそれを言うんだ?)
(なに、)
(いーや、別に。肝に銘じとくよ)


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あまりにもレイアちゃんが報われなさすぎたから、ジュードに片想いさせたかった。

ジュレイへの3つの恋のお題:きっと大丈夫だよ/優しい笑顔が好きだった/濡れた指先 http://shindanmaker.com/125562


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