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*もっと早く気付けたならば(ゼロスとしいな)
※クラトスルート
※ネタバレ注意





次の目的地へと移動中。
後方で歩いていたゼロスが立ち止まる。それにいち早く気付いたのは、その横を歩いていた(不本意ではあるが)しいなだった。自然に、赤髪の青年のほうへ目線が移る。

何ボサッとしてんだい、サッサと歩きな。そう言ってみたが、それに青年は答えることは無かった。


「あーあ。飽きちまったなー」

「…ったく、この状況でいきなり何言ってんだい!アンタのその呑気さには呆れるよ」


だったらそこでずっとつっ立ってな。そう言ってしいなはゼロスから目を反らし、歩き始めた。自分だって少しは休息したいと思わなくはない。だが、今は次の目的地にたどり着くほうが先なのだ。それをアイツときたら……

沸々とした怒りから、しいなの歩く速度が上がる。効果音をつけるならば、ズンズンという重たい音がしそうだが。




「───生きてるってことに」




‥え?
後ろから聞こえた小さな言葉。
聞き間違え?いや、それにしてはやけにはっきり聞こえた。驚いて振り向くと、今まで自分が見たこともない表情を浮かべたゼロスが居た。

その瞳は、何も写していないような気さえするぐらいにひどく冷えきったもので。それに少しだけ恐怖を感じてゼロスと呼ぶと、いつものおちゃらけた声が返ってきた。



「…なーんちゃってな!何々、しいなってば本気で心配しちゃった?俺さまこーんなに恵まれてんのに、んなこと思う訳ないっしょー?」

「…あ、アンタ…!!」

「でひゃひゃ、俺さましいなにも愛されちゃってんな〜」



いつも通りヘラヘラ笑うゼロスに、少しでも心配してしまった自分に、苛ついた。いつもよりも大きな音を立てて、しいなの平手打ちが飛ぶ。そのあまりにも大きな音に、先を歩いていた仲間達が振り返る。


ゼロスは、バランスを崩して尻餅をついてしまっていた。



「いつも何も悩みなさそうにヘラヘラしてて、女の子に囲まれて鼻の下伸ばしてるヤツが何言ってんだい!思ってもいないこと言ってんじゃないよ!!」

「……でひゃひゃ、しいな超キビシー」


弱々しく笑うと、青年は服を叩いて立ち上がった。心配そうに見つめる仲間達の目線に気付いて、手を上げた。



「んな心配しなくても俺さまは頑丈だから平気だぜぇ〜?ホラホラ、早く先に行った行った!」

「別に心配なんかしてないけど…気になるんだから仕方ないじゃん。だったら静かにしてよねアホ神子」

「…このクソガキ」

「確かにその通りだわ。もう少し冷静に話が出来ないのかしら?ゼロスの戯れ言なんて、いつものことなのだから」

「あ、アタシが悪いってのか!?言っておくけど今回悪いは100%コイツだよ!」

「しいな!落ち着いて、ね?」

「オイオイ、ゼロスは何言ったんだ?」

「…余程勘に触る言葉だったのだろう」

「…勘に触る……。確かに、それは手が出るかも知れません…」



みんながそれぞれ話をしている最中、ふとゼロスを見た。普段ならば一瞬でも見れば視線に気付いてこちらを見るのに、こちらを見ようとはしなかった。

そしてこれ以降、ゼロスは二度と仲間の誰とも目を合わせなくなった。






(アタシの、せいだ)






「飽き飽きしてたんだ……生きてるってことに」





目の前で繰り広げられた現実。
その光景から、目を反らしたくなった。青年の髪と同じ色で、服が滲んでいる。目の前が歪んで、呼吸が上手く出来ない。





「俺は…間違って生まれてきたから…さ…」




(馬鹿なこと言ってんじゃないよ)
(ゼロス、アンタあの時言ったじゃないか)
(俺さまは恵まれてる、って)
(愛されてるって)
(ねえ、)




今更気付いてしまった。
あの時の笑顔も、言葉も。弱味を見せるのを躊躇い、それを人一倍恐がる青年が、出してしまった強がりなのだということを。

常に、偽りの仮面を付けて生きていたことを。自分自身が生きているという事実が、自分自身で許せなかったのだということを。

あれが、青年が見せた最初で最後の弱い部分だったのだ。




(アタシがあそこで気付けていたなら)
(もっと、ちゃんと真剣に聞いてやれば)
(救えたかも、しれないのに)




「…ゼロ、ス…」






時計の針は戻せない
(ごめん、ごめん、ごめん)



-------
捏造クラトスルート。
ゼロスは自分自身が最低なんだと理解している。もう、後には引けなくなって仲間達と一歩距離を置くようになる(ていうかゼロスは基本軽く見られてるから、仮面だって気付かれないし)。

恐らく直接的な原因はしいなではないけれど、ゼロスの心を閉じさせるきっかけになった(と、しいなは苦悩する)。きっとゼロスを生存ルートにするにも、死亡ルートにするにも、それはちょっとしたきっかけなんだと思う。

元々ゼロスが不安定な上に、色んなことに絶望してるから。神子って生まれもそうだけど、自分自身が神子として生まれたっていうのが一番許せなかったんだと思う。多分パーティの中で一番色んなことに諦めてるから、ヤツがパーティの中で一番ネガティブだと前言った理由はそれ。

恐らくゼロスは『密偵としてパーティ入り→でも徐々にロイド達のことを信頼し始める→神子を辞める・死ぬことは逃げることじゃないかと思い悩み始める→でも所詮俺は仲間を裏切ってる→自分自身が嫌いだし、許せない→ロイド「信じて…良いのか?」(ああ、やっぱりそうだよな)→クラトスルート』って感じじゃないかと思うんだよね。そのロイドの一言で、ある意味吹っ切れたというか。いや、その前にも何かフラグがあるのかもしれないけど…


嫌な役回りさせてごめん、しいな。ゼロス関連は基本暗い話しか書けない←


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